中国政府による宗教規制が進む中、2年前に「香港国家安全維持法」が施行され、かつての高度な自治が大幅に制限されている香港で、聖書が不足する事態が懸念されている。
カトリックの「思高聖経学会」(香港フランシスコ会聖書研究所=SBF)は7月25日、公式サイト(中国語)で、印刷会社が当局とのトラブルを恐れ、聖書の印刷について取引停止を申し出てきたと発表した。SBFが所有する聖書の在庫はすべて書店に出荷されており、早期に印刷の問題が解決されない場合、カトリック教会で使用されている中国語の聖書(思高聖経)が不足する可能性があるという。
この問題は、米迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC、英語)や、米キリスト教系人権団体「チャイナエイド」(英語)も伝えた。
チャイナエイドによると、SBFのレイモンド・メリー・ユン修道士は香港のキリスト教紙「時代論壇」とのインタビューで、SBFの聖書を印刷していたのは中国本土の印刷会社だったが、聖書を印刷するには政府への申請が必要であるため、取引停止を申し出てきたと明かした。また、SBFが発注する印刷量がそれほど多くなかったことも、取引停止の一因とみられている。
ユン修道士によると、香港には、SBFの聖書の製作に必要な製本技術を持つ印刷会社はなく、新しい印刷会社を探すのは簡単ではないという。
ICCによると、香港で聖書を出版しているSBF以外のキリスト教団体は、これまでのところ影響を受けていない。
中国では3月、新たな宗教規制として「インターネット宗教情報サービス管理弁法」が施行され、ネット上で宗教活動をするには、当局から許可を得ることが必要となった。しかし、許可を申請できるのは、中国政府公認の5つの宗教に限られており、許可を得た場合も、当局の意向に沿った内容に制限されるなど、宗教に対する規制がますます強まっている。