8月15日の終戦記念日を前に、日本キリスト教協議会(NCC)は9日、平和メッセージを公式サイトで発表した。メッセージは、ロシアによるウクライナ侵攻後、日本が憲法9条に基づく平和外交の道を放棄して途方もない武器購入と防衛費の倍増計画を推し進めていると主張。神道政治連盟国会議員懇談会の会合で配布されたLGBT(性的少数者)に関する冊子を巡る問題にも触れ、「敵意の中垣が砕かれ、誰もが差別されず、取り残されず、共感と寛容の心でつながれる神の国の平和を追い求めます」と伝えた。
コロナ禍で問われていることとして、日本の政治がこれまで、人々の健康と弱者を助ける福祉を重視したセーフティーネットの構築を軽視してきたと主張。また、労働者の非正規労働化と大企業の利益優先に基づく貪欲資本主義によって、子どもをはじめ多くの人々が貧困の中へと追い込まれてきた現実があると強調した。さらに、安倍晋三元首相の襲撃事件をきっかけに明白になってきた悲劇として、「人生と社会生活が追いつめられる苦境の中で救いを求める人々が旧統一協会のような反社会的なカルト集団のマインドコントロールにより収奪の餌食となるばかりでなく、このカルト集団と癒着して自らの権力を固めることをいとわない政治がこの国の民主主義を腐食させている」とした。
その上でLGBT冊子の問題に言及し、「多様性・多元性を嫌悪し、同質性・均質性を憧憬(しょうけい)する思想とその信奉者たちは、このように地下茎においてつながり、『改憲勢力』を構成してきました」と主張。「戦争のできる国になろうとする願望と『伝統的な人間観や家族観』に執着する願望との結合を見抜き、これらの潮流に抗(あらが)っていかねばなりません」とした。
最後には、キリスト者が平和の主であるイエス・キリストの証人として立つべき「地の果て」(使徒1:8)は、「この世界の不条理に傷つけられ、忘れられ、苦しみと悲しみを負ういのちが声なき叫びを上げるところ」だと指摘。「教会が自己保全の扉の内に自らを閉ざさずに、真実にキリストの体として呼び集められ遣わされ、主の平和の働きに用いられ、奉仕することを祈り求めます」とした。