安倍晋三元首相の国葬実施に関する閣議決定について、日本キリスト教協議会(NCC)と日本キリスト教婦人矯風会がそれぞれ抗議声明を発表した。
NCCは25日付の声明で、「閣議の恣意(しい)的判断によって国葬とされる葬儀に国費を支出することは、国の財政権限を国会決議に基づかせる憲法第83条の違反」だと主張。国葬となれば、全国の都道府県と教育機関に弔旗・記帳台設置などを指示する通達が発出されるとし、「国民の弔意が事実上、権力によって強いられる」と指摘した。その上で、国葬自体が「さまざまな理由から弔意を表すことを拒む立場や言論を封じることにつながり、人間の思想・良心の自由を保障する憲法第19条の重大な違反」だと非難。特定の人間の国葬化は、「聖書が警告する人間の神格化を意味する」ものでもあるとし、警鐘を鳴らした。
また、安倍元首相が在任期間中に取り組んだ安全保障関連法や特定秘密保護法、共謀罪法については、多くの批判があると指摘。森友学園や加計学園、桜を見る会を巡る問題については、「権力の私物化として厳しく問いかけられた事件」であるとし、「真相はいまだ不問に付されたまま」とした。
さらに、自民党をはじめとする政界が、世界平和統一家庭連合(旧統一協会)と深い関係を築いてきたことが明らかになりつつあるとし、「今こそ政治とカルト集団との癒着の真相が徹底して究明されなければなりません」と強調。このような状況で国葬を行うことは、「安倍政治の内実の批判的検証と、特定の宗教団体、とりわけカルト団体と政治の癒着関係の真相を究明する言論を、政治権力で封殺することにつながりかねません」とした。
日本キリスト教婦人矯風会は22日付の声明で、「国会を経ずして閣議決定することは全ての国民の納得を得るものではありません」と指摘。「国家が一個人の死に特別な意味付けをすることで、私たちの内心の自由が侵されることを危惧します」と抗議した。
また、国葬を行うことで民主主義を守り抜くとした岸田文雄首相の決意表明には違和感を覚えるとし、「むしろ、安倍晋三元首相は、民主主義を空洞化し、日本を戦争ができる国へと転換し、立憲政治に危機を招きました」と主張。森友学園や加計学園、桜を見る会を巡る問題については、「最後まで説明責任を果たしていません」と非難した。