街頭演説中の安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件を受け、日本カトリック司教協議会会長の菊地功大司教(東京大司教区)は11日、カトリック中央協議会のホームページで談話を発表した。菊地氏は哀悼の意を示しつつ、2019年に訪日したローマ教皇フランシスコが日本政府との懇談で語ったことは、「すべてのいのちがもつ不可侵の尊厳と、あらゆる苦難の中にいる兄弟姉妹に、連帯と支援を示すことの大切さ」だったと指摘。「『すべてのいのちを守るため』というメッセージを伝えた教皇訪日を実現するために、安倍晋三元総理大臣はご尽力くださいました」と述べ、遺族に主からの深い慰めと平安があるよう祈り求めた。
菊地氏は安倍氏の訃報に、「驚きと共に悲しみが湧き上がっています。安倍元総理大臣の永遠の安息をお祈りいたします」とした上で、「いのちに対する暴力を働くことによって、自らの思いを遂げようとすることは、いのちを創造された神への挑戦です。神がいのちを与えられたと信じるキリスト者にとって、いのちはその始まりから終わりまで守られなくてはならない神からの尊厳ある賜物です」と犯行を非難した。
「多くの人が自由のうちにいのちをより良く生きようとするとき、そこに立場の違いや考えの違い、生きる道の違いがあることは当然です。その違いを、力を持って、ましてや暴力を持って押さえ込むことは、誰にもゆるされません」と強調。「暴力が支配する社会ではなく、互いへの思いやりや支え合いといった神のあわれみの心が支配する社会が実現することを祈り行動したい」とした。