日本カトリック司教協議会会長の髙見三明大司教(長崎大司教区)による平和旬間の談話が21日、カトリック中央協議会のホームページで発表された。髙見氏は、2019年のローマ教皇の訪日テーマから「『すべてのいのちを守る』ことこそ平和への道であり、平和をつくるという確信を皆で共有したい」と述べ、米中間対立や核兵器禁止条約、新型コロナウイルスなど、昨今の情勢に触れつつ、平和に向けたメッセージを語った。
米中間対立については、世界各地で発生している武力紛争や難民問題などに加わる形で、国際社会の安定と政治や経済の分野に少なからぬ悪影響を与えつつあると指摘。諸国間のより良い関係構築のために「忍耐強い対話の努力」を続けることを強く願うとした。
今年1月に発効した核兵器禁止条約については、米国などの核保有国と、日本などの「核の傘」の下にある国々が批准していないことを問題視。「唯一の被爆国である日本こそ真っ先に批准すべき」と述べ、批准国が一国でも増えるよう祈り、働き掛けていきたいとした。
新型コロナウイルスについては、死者が世界で400万人を超え、無数の人々が困窮に追い込まれているとともに、感染者やその関係者だけでなく、医療従事者まで差別や偏見の対象になっている問題を取り上げた。また、ワクチンの配分は貧しい国々が後回しにされているとし、「富める強い国は貧しい人々を助けるべき」「自分だけでなく他の人のいのちをも守らなければ」と訴えた。
その上で、「いのちは、個々のいのちだけでなくいのちのつながりをも意味すると考えるべき」と指摘。一人一人のいのちを守ることは「いのちといのちのつながりを守ること」でもあるとし、「個々のいのちが充足し、いのちといのちの間に調和があり、すべてのいのちが幸福に満たされる状態こそが平和」と伝えた。
平和旬間は、1981年に当時の教皇ヨハネ・パウロ2世が広島を訪問し、平和メッセージを発信したことを受け、翌82年から始まった。毎年8月6日から15日までの10日間が該当し、平和のために祈るとともに、各教区がさまざまな取り組みを行っている。