カトリック東京大司教区(菊地功大司教)は6日、戦後75年の平和メッセージを公式サイトで発表した。「過去をふり返ることは、将来に対する責任を担うことです」と、1981年に当時のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が広島で語った言葉を引用し、戦争の悲惨さが繰り返し語り継がれてきたのは、自然災害とは違い「戦争は人間のしわざ」であり、自らの力で避けることが可能であるからに他ならないと強調。「さまざまな課題が複雑に絡み合う現実の中で、神の平和を実現するために、幅広い連帯の中で、地道に取り組んでいく決意を、戦後75年の平和旬間に当たり、新たにしたい」とした。
教会が考える「平和」の意味について、「すべての時代にわたり人々が絶え間なく切望してきた地上の平和は、神の定めた秩序が全面的に尊重されなければ、達成されることも保障されることもありません」と、教皇ヨハネ23世が回勅「地上の平和」(1963年)で述べた言葉を引用。「教会が語る『平和』とは、神の定めた秩序が実現している世界、すなわち神が望まれる被造物の状態が達成されている世界であり、それは実現してはいません」とした。
その上で新型コロナウイルスの脅威に触れ、「グローバル化した世界を巻き込んで発生したいのちの危機は、その解決のためにも、世界全体の視点からの連帯と支え合いが必要であることを明確にしています」と指摘。「いまは対立するときではなく、いのちを守るために、互いに手を差し伸べ合うときです。いのちを奪うことではなく、守るために行動するときです」と訴えた。
最後に、マタイによる福音書5章9節「平和を実現する人々は、幸いである。その人たちは神の子と呼ばれる」を引用し、「私たちは、あらためて主のこの言葉に励まされ、神が大切にされるたまものであるいのちが等しく大切にされ尊重される世界を実現し、平和を確立していきましょう」と呼び掛けた。
日本のカトリック教会では、教皇ヨハネ・パウロ2世が広島で平和メッセージを発信した年の翌82年から、毎年8月6日から15日までの10日間を「平和旬間」と定め、平和のために祈るとともに、各教区がさまざまな取り組みを行っている。