広島、長崎への原爆投下から間もなく75年となるのを前に、米ジョージタウン大学バークレイ宗教・平和・国際情勢研究センターが3日、平和構築について考えるオンラインイベントを開催した。日本カトリック司教協議会会長の髙見三明大司教(長崎大司教区)と米国カトリック司教協議会「国際正義と平和委員会」委員長のデイヴィッド・マロイ司教(イリノイ州ロックフォード教区)が出演し、核不拡散と軍備縮小に向けた連帯を確認した。
長崎の原爆によって親類を亡くし、自身も胎内被爆者である髙見大司教は、「浦上小教区の1万2千人の信者のうち、原爆後4カ月の間に8500人が亡くなりました。何よりも、あらゆる犠牲をささげて30年の歳月を経て造り上げた祈りの家(浦上天主堂)を失ったことは、精神的に大きなダメージを与えました」と証言。「神を信じられなくなって、教会から遠ざかる信者もいました。しかし、生き残った被爆者は、ひどいやけどのために怖がられたり、差別されたりしました。原子病は遺伝すると考えられて、結婚を断られた人が大勢いました。そして、75年たった今も、被爆の影響に苦しんでいる人がたくさんおられます」と語った。
昨年11月に広島と長崎を訪問したローマ教皇フランシスコが、核兵器の所有も使用も倫理に反すると明言したことに触れ、「核兵器禁止条約を含め、核軍縮と核不拡散に関する主要な国際条約にのっとり、たゆむことなく迅速に行動し、(核兵器廃絶を)訴えていきます」と表明した。また、「平和をつくるために武器が絶対必要であるという考えを保持する限り、核兵器縮小でさえ難しいのですから、核兵器廃絶は実現不可能」と指摘し、「米国と日本が本当の意味で和解し、その上で今後、核兵器廃絶のために協力することができれば、これに越したことはありません」と話した。
マロイ司教は、広島と長崎の原爆投下後も、世界ではさまざまな国が核兵器を保有するようになり、国際的な秩序も、核兵器の使用による相互破壊の脅威という危うい枠組みの上に組み立てられてきた現実を指摘。「平和と和解は、困難を伴う仕事です。私たちはそのために、大きな努力を注がなければなりません」と語り、前委員長のオスカー・カントゥ司教が、5年前に浦上天主堂で行われたミサで語った次の言葉を引用し、米国の司教団としての立場をあらためて表明した。
「アメリカ合衆国の司教団は、日本の司教団と連帯して、地球規模の核不拡散と軍備縮小を共に弁護します。だからこそ、1983年の司牧書簡『平和への挑戦』で、米国の司教団は、『私たちの国が、1945年の原子爆弾投下に対する深い悲しみを表明することができるような世論の環境』を作ることを約束しました。そのように悲しむことなしに、将来核兵器を一切使用しないための方法を見つけ出す可能性はないからです」
最後には、長崎市にある純心女子高校の生徒による「千羽鶴」の合唱が紹介され、髙見大司教とマロイ司教がそれぞれ平和のための祈りをささげた。今回の企画には、日本カトリック司教協議会の「日本カトリック正義と平和協議会」なども協力したという。