終戦から75年を迎えるに当たって、日本キリスト教協議会(NCC)は12日、「主イエス・キリストの平和の福音に励まされ、遣わされた世にあって、NCCに加盟する諸教派・団体と共に平和を実現する道を歩む思いを新たにします」とする平和メッセージを公式サイトで発表した。
メッセージは、「コロナ禍のパンデミックを体験することにより、大きな問いを投げかけられています」とし、「すべてのいのちが互いに生かし合い、調和する被造物となるように作られた神の創造に対して、人類はこれまで、飽くことなく利便と快適、そして利益を追い求め続ける貪欲な資本主義を世界化させながら、生態系を破壊し、それに伴い異常気象変動を引き起こす道を歩んできました」と指摘。「私たちは今、そのような道を振り返り、悔い改めながら、いのちの源であられる神の創造の摂理と秩序に立ち帰り、すべてのいのちの共生する地球の持続可能な道を呼びかける宣教と奉仕に努めなければなりません」と訴えた。
「緊急事態」を憲法上の条項として導入し、立法権や司法権を行政当局に一元化できるような憲法の改正を議論する政治の動向に対しては、「歴史の教訓に学び、自由と個の尊厳、そして三権分立を厳守する立憲民主主義による平和を求めます」と強調。さらに、「むしろ私たちは、ウイルス感染拡大の防止と経済活動の保全という課題に臨む中で、政治と行政が機能不全に陥ることを憂慮します」と指摘し、「適切で迅速で周到なる感染防止対策と共に、経済的苦境に見舞われる人々に手厚い補償の政策が行われることが求められます。その施策が審議され、政策を打ち出す(臨時)国会審議を、今多くの人々が求めているのです」と強調した。
また、「コロナ禍の状況で自粛が求められる困難な経済活動において、まず初めに技能実習生をはじめ在日外国人が不当に解雇され、帰国もできず、生活保障の対象からも除外されるような差別は許されません」と指摘。出エジプト記22章20節「寄留者を虐待してはならない。抑圧してはならない」を引用し、「聖書が教える通り、私たちは、このコロナ禍の苦境においても、差別なく、小さく弱くされた者も、すべてのいのちが共生する平和な社会をめざします」とした。
一方、国際社会ではパンデミックの危機にあって今こそ互いに協力し合う「平和の外交」が求められているにもかかわらず、米中対立が深まり、東北アジアでは日韓関係の行き詰まりが改善されないままの状態に「心を痛めます」とし、「キリストの平和を追い求める私たちは、和解と平和の宣教を今こそ主に導かれ、推し進めなければなりません」と訴えた。
また、この時代に人々の直面する、もう一つの平和の危機は「心の平安の喪失」と指摘。「自粛」と「社会的距離」の要請が求められる中で、人々はますます「生活と将来への不安」と「社会的交わりの希薄化による孤独」に苦しんでおり、さらには「不安といら立ちが排他的な猜疑心(さいぎしん)や社会的な差別を増幅させることもあります」とした。
その上で、「それゆえにこそ、キリストによって呼び集められ、世(オイクメネ)に遣わされた教会(エクレシア)は、『地の果て』のような現実の中で不安と孤独にあえぐ人々に『世の光』として平和の福音を告げ知らせ、また弱く、小さくされたいのちに寄り添い、慰め、励まし合い、共に生きる希望を分かち合うための愛の奉仕(ディアコニア)に召し出され、主と共にあり、主に仕える道へと呼び出されています」と強調。「今こそ、私たちは、私たちの真ん中に立たれ、聖霊の息を吹き注いでくださり、この世へと送り出してくださる主イエス・キリストに従い、平和のために働く道へと踏み出しましょう」と呼び掛けた。