同性婚をめぐる立場を理由に、米大衆伝道者フランクリン・グラハム氏の伝道集会の広告が削除された問題で、広告を削除した英国の地方議会がグラハム氏側に謝罪するとともに、訴訟費用や賠償金など合わせて約1420万円を支払うことで合意した。
広告は、2018年に英西北部ブラックプールで開催された伝道集会を宣伝するために、地元のバスに掲載されたもの。集会の概要を伝えるものにすぎなかったが、グラハム氏が同性婚を認めない立場であることから、LGBT(性的少数者)の活動家らがSNS上で反対キャンペーンを展開。バスの運行会社が広告を削除していた。そのためグラハム氏側は、バスを運行するブラックプール交通とその所有者であるブラックプール市議会を提訴。今年4月には、広告削除は差別的な措置だったとする判決が下されていた(関連記事:伝道集会の広告削除めぐる訴訟、フランクリン・グラハム氏側が勝訴 英国)。
この判決を受け、ブラックプール市議会は9日、リン・ウィリアムズ議長による声明(英語)を発表。「私たちは、広告それ自体が不快なものではなかったことを認めます」とし、「広告を削除する際、その行為が他の人々に不快感を与えたり、ある種の声を聞いてはいけないと示唆したりする可能性を考慮していなかったことを認めます」とした。
その上で「イベントの主催者には、ご迷惑をお掛けしたことを心よりお詫び申し上げます」と謝罪。「私たちはこの経験から学びました。私たちは、ブラックプールの人々のアクセスと機会の平等を確保し、すべての人に質の高いサービスを提供し、改善することを約束します」と述べ、同じようなことが繰り返されないよう「明確で透明性のあるポリシー」を導入したとした。
グラハム氏が総裁を務めるビリー・グラハム伝道協会(BGEA)の声明(英語)によると、この和解により、市議会側は訴訟費用として7万ポンド(約1050万円)、賠償金として2万5千ポンド(約370万円)、計9万5千ポンド(約1420万円)を支払うことで合意した。
グラハム氏は「これは英国の信教の自由にとって重要な瞬間です」と強調。「私たちは、訴訟の最終的な結果を神に感謝するとともに、この訴訟が今後、英国の教会とクリスチャンにもたらす意味についても神に感謝しています」と語った。
この訴訟では、英マンチェスター州裁判所のクレア・エバンス判事が判決で、市議会側がグラハム氏側の宗教的権利を侵害し、表現の自由を「徹底的に無視」したと指摘。「原告やその宗教的信念を共有する人々の権利を考慮することなく、コミュニティーの一部の人々の権利や意見を優先した」とし、グラハム氏側を「圧倒的に支持する」と表明していた。