同性婚に反対していることを理由に、米国人伝道者フランクリン・グラハム氏の伝道集会の広告が削除されたことをめぐる訴訟で、英マンチェスター州裁判所は1日、広告削除は差別的な措置だったとし、グラハム氏側の訴えを支持する判決を下した。
広告は、2018年に英西北部ブラックプールで開催された伝道集会「ランカシャー・フェスティバル・オブ・ホープ」を宣伝するために地元のバスに掲載されたもの。内容は「Time for Hope!」と大きな文字で書かれ、他は集会名や開催日、開催場所、ホームページのURLなどが記載されているのみだった。しかし、LGBT(性的少数者)活動家らがSNS上で伝道集会に対する反対キャペーンを展開したことで、バスの運行会社は削除を決めた。訴訟は、バスを運行するブラックプール交通とその所有者であるブラックプール市議会を相手取って行われた。
クレア・エバンス判事は判決(英語)で、結婚に関するグラハム氏の宗教的信条を理由にした広告削除は「平等法」に違反し、集会主催者の表現の自由に対する不当な干渉だと指摘。世俗的な団体が同じような理由で広告を削除されたことがないことにも言及した。また、同性婚に関するグラハム氏の宗教的信条は、キリスト教や他の宗教でも共有されているものだとし、「一部の人には不快感を与えるかもしれないが、それによって『過激主義』だとすることはできない」とした。
その上でエバンズ判事は、グラハム氏側を「圧倒的に支持」すると表明。ブラックプール市議会側はグラハム氏側の表現の自由を「徹底的に無視」し、LGBTコミュニティーの権利や意見を優先したと結論付けた。
この判決を受け、グラハム氏が総裁を務める「ビリー・グラハム伝道協会」(BGEA)は同日、声明(英語)を発表。「英国を席巻しているキャンセル文化に対する強く明確な反撃」だと歓迎した。また、グラハム氏自身は「この判決を神に感謝します。なぜなら、英国のすべてのクリスチャンにとっての勝利だからです」と語った。
英国BGEAのジェームズ・バレット議長は、「この判決は、英国のすべてのクリスチャンが、彼らを黙らせようとする公人やその他の団体による差別や妨害を受けることなく、公の場で自身の信念を共有する権利を有していることを確認するものです」とコメント。「言論の自由とは、(他者に)不快を与えないことのみを話せる自由を意味するのではないことを、裁判所が繰り返し語ってくれたことに感謝しています」と述べた。
こうした妨害にもかかわらず、ランカシャー・フェスティバル・オブ・ホープは18年9月21~23日の3日間にわたって、ブラックプールの複合施設「ウィンター・ガーデンズ」で開催され、約9千人が参加し、5万人以上がその模様をオンラインで視聴した。