英国の約3500の福音派教会が加盟する英国福音同盟(EA)は15日、ボリス・ジョンソン首相に書簡を送り、同性愛者の性的指向の矯正を目的とする「転向療法」を禁止する法案を検討している政府に再考を求めた。現在検討されている転向療法禁止法案は、日常の教会活動さえも違法とする恐れがあるとし、信教の自由に対する深刻な懸念を表明した。
EAの国内ディレクターを務めるピーター・ライナス氏は書簡(英語)で、過去に宗教団体による有害な慣行があったことや、教会が「性的指向を理由に、人々に対する偏見や差別を助長し、危害を長期化させる」役割を果たしてきたことを認めた。
「私たちは虐待行為に反対します。また、電気けいれん療法(頭部に通電することで人為的にけいれん発作を誘発する治療法)や矯正レイプ(同性愛者を異性愛者にするため性行為を行うこと)は明らかに間違っているため、やめさせるべきです」
その上で、このような慣行はすでに違法とされているとライナス氏は指摘。転向療法が明確に定義されない限り、現在検討されている法案は、祈ったり、牧会上のカウンセリングを行ったりするだけでも有罪にされる恐れがあると警鐘を鳴らした。
その上でライナス氏は、いかなる禁止措置も信仰者に対して「意図しない」結果をもたらすことがないよう政府は注意を払い、現行法の下ですでに禁止されていることを適切に評価するよう求めた。
「検討中の法案は個人の自由を制限し、なくてはならない信教の自由に弊害をもたらしかねません。キリスト教徒や日常の教会活動を潜在的に違法としてしまう可能性があります」
「私たちは、転向療法に分類されている複数の慣行が実施されてきたことを深く懸念しています。しかし同時に、この問題に対して政府が明確な対応を怠っていることにも懸念を抱いています」
書簡の中でライナス氏は、転向療法の「広範な」定義に基づく禁止措置が取られた場合、「結婚や性別に関連する聖書箇所から説教することで起訴される危険にさらされる」と指摘している。また、禁止措置に宗教的あるいは霊的な設定が明確に盛り込まれた場合、起訴される可能性はさらに高まるとし、「信教の自由に対する直接的な脅威」だと警鐘を鳴らした。
「そうなった場合、結婚まで純潔を保つようキリスト教指導者が若者に奨励することで、指導者は逮捕される危険にさらされるでしょう。また、ある信者が同性同士で性交渉をする誘惑に駆られ、それに立ち向かえるよう一緒に祈ってほしいと別の信者に頼んだ場合、一緒に祈った信者は有罪にされてしまうでしょう」
英公共放送「BBC」(英語)によると、リズ・トラス女性・平等担当相は、転向療法を禁止する法案を近く提出すると述べており、この問題を議論するために先週も議員らと会談を行ったことを明かした。