英国国教会(聖公会)は9日、英中部ヨークで開いた総会(会期:7〜10日)で、トランスジェンダーの人々を肯定し、歓迎する動議を正式に可決した。
可決された動議は、「トランスジェンダーの人々が教会で歓迎され、肯定される必要を認識する中で、本総会は主教会に対し、人の性転換を記念するための全国的に推奨される何らかの典礼資料が準備される可能性を熟慮するように求めます」という内容のもの。
投票は、主教会、聖職会、信徒会の3部会で行われ、いずれも賛成票が反対票を大幅に上回った。特に主教会で反対したのは2人だけで、30人が賛成票を投じ、聖職会は賛成127・反対28、信徒会は賛成127・反対48だった。
ブラックバーン教区のクリストファー・ニューランズ牧師は総会の冒頭、「トランスジェンダーの人々は、彼らをお造りになり、紆余(うよ)曲折のあったその人生の全過程においても共におられた神から、大切にされ、愛されている。そのように私たちは信じるのだと断言する力強い声明を、(今総会で)出せることを期待しています」と語った。
総会ではまた、同性愛者などの性的指向や性自認を矯正する「コンバージョン・セラピー(転向療法)」と呼ばれる行為の禁止を呼び掛ける動議も可決された。
英国国教会の次席聖職者であるヨーク大主教ジョン・センタムは、「(トランスジェンダーの人々を受け入れる)神学的考察は主教会によって行われる必要がありますが、それは非常に迅速に行うことができます」と語った。
リバプール教区のポール・ベイズ主教は、「世界が私たちに耳を傾けるとき、LGBT的な指向やアイデンティティーは犯罪ではないと私たちが言うことを、世界は聞く必要があります」と述べた。
一方、カンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーは、結婚は1人の男性と1人の女性の間のものという定義を支持し続けると述べた。
だが、アングリカン・コミュニオン(全世界聖公会)に属する各国の聖公会のうち、幾つかはすでに結婚の定義を変更している。最近では、スコットランド聖公会が6月、英国内のキリスト教主流派の教派としては初めて、同性婚を承認した。
LGBTを支持する英国国教会の傾向は、保守派の間に大きな懸念をもたらし、伝統的な英国国教会の教区を監督する彼ら独自の「宣教主教」を提案する「グローバル・アングリカン将来会議」(GAFCON=ガフコン)などの諸グループの形成を招いた。
ガフコンは、西洋諸国が「キリスト教の遺産を放棄している」とし、英国内の多くの教会が「ヒューマニストの世俗的な哲学に直面し、キリスト教の明確な教えから妥協させようとする圧力の下にある」と警告している。
「幾つかの分野では、福音が水で薄められ、場合によっては、否定されてさえいるように思われます。忠実な聖職者たちでさえ、性倫理やキリストの唯一性といった非常に重要な問題に関して、はっきりとした教えを自由に教えることができるとは感じていません」
ガフコン大主教会議の議長であるナイジェリアのニコラス・オコウ大主教は、スコットランド聖公会の結婚に関する教会法変更決定後、次のように語った。
「結婚を再定義しようとするこの試みは、私たちがそれについて意見の不一致を認めたり、共に歩み続けることができるような二次的な問題ではありません。これは、イエスが結婚は1人の男性と1人の女性の間のものであり、このような結婚以外の性行為は罪であると教えていることについて、誤りだと言うようなものなのです。これは聖書の権威を徹底的に拒絶することです。スコットランド聖公会は、神の御言葉が明らかに罪深いと教えている振る舞いを、清いものだとできると主張しています。聖書によれば、このような振る舞いは、悔い改めがなければ、それを行う人々と神の御国を隔てるものなのです」