バチカン(ローマ教皇庁)教理省が、同性婚について「創造主の計画に沿わない」とし、同性カップルの結合(婚姻に類する関係)を祝福することはできないとする見解を示したことを受け、キリスト教界では賛否が分かれている。カトリック・プロテスタント、また進歩主義・保守主義と、それぞれの立場に立つ米国のキリスト教指導者5人の反応をまとめた。
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フランクリン・グラハム(プロテスタント福音派伝道者)
ビリー・グラハム伝道協会(BGEA)の会長を務め、保守的な福音派の代表的人物でもある大衆伝道者のフランクリン・グラハム氏は、同性カップルの結合を祝福することはできないとするバチカンの見解に支持を表明した。
グラハム氏はフェイスブック(英語)で、「バチカンがこの問題を正しく理解したことを歓迎します」とコメント。「同性愛の方々は尊敬と尊厳に値します。誰もが同じです。しかし私たちは、聖書の教えに反する行動を容認することはできません」と述べた。
「聖書における結婚の定義は、神の前で一人の男性と一人の女性が結合することです。(これは)エデンの園で始まりました。同性婚を肯定し、神が罪と定めたものを祝福することの危険性は、すべての教会が理解するところでしょう」
ジェームズ・マーティン(カトリック雑誌編集長)
米国のイエズス会が発行する週刊誌「アメリカ」の編集長を務めるジェームズ・マーティン神父はツイッター(英語)で、バチカンの見解に失望を表明した。教皇フランシスコと同じくイエズス会士であるマーティン神父には、『橋を作る:カトリック教会とLGBTコミュニティーが尊敬と共感と感受性の関係に入る方法』(英語、2017年)などの著書がある。
「今日、私はLGBTQの方々や彼らの友人、家族、彼らに連帯を示す人たちから何十通ものメッセージを受け取りました。彼らは同性婚の祝福を禁じるバチカンの発表に失望し、落胆し、肩を落としています」
「私に連絡してきた多くのLGBTQの方々にとって特に苦痛だったのは、神は『罪を祝福しないし、できない』という下りです」
マーティン氏によると、「意を決してそのような祝福を与えた幾人かのドイツ人司教や西側諸国の司祭たちに(多くの人が)勇気付けられた」という。マーティン氏は「(彼らが)願っていたのは、そのような祝福が小さな道筋を開くことでした。つまり、バチカン教理省の言う『肯定的な要素』を教会が認めるという道筋です」と続け、「決して絶望してはいけません」と励ました。
ケビン・ミラー(カトリック系大学教授)
カトリック系のフランシスカン大学スチューベンビル校(米オハイオ州)で道徳神学を教えるケビン・ミラー教授は、バチカンの立場に同意を表明する声明を発表した。
カトリック教会は「そのような行為(同性婚)は本質的に無秩序であると教えてきましたし、今もそう教えています」とミラー氏。「この教えは聖書と伝承にしっかりと基づいており、これ以外にはあり得ません」と語った。
「『本質的に』というのは、こういうことです。(バチカンの)回答が述べているとおり、肯定的な要素(例えば、友情やそれに伴う他者への心遣いなど)は同性同士の関係にも存在するかもしれません。しかし、同性同士の関係は、同性間の行為を含んでいる限り、全体としては『創造主の計画に沿わない』のです」
「神の計画と本質的に対立するものを祝福するなら、それは性質上、祝福を乱用することになるという意味で一種の矛盾です。禁止されているというよりも不可能なのです」
ジェイミー・マンソン(カトリック系進歩主義団体代表)
進歩主義団体「カトリック・フォー・チョイス」(CFC)のジェイミー・マンソン代表は、バチカンの見解を非難する声明(英語)を発表した。
CFCは最近、人工妊娠中絶の権利拡大を擁護する方針を決めており、今回の教理庁の見解をめぐっては、「いかなる形であれLGBTQコミュニティーを否定するのは深刻な残虐行為」と非難した。
マンソン氏は声明で、「同性婚に反対するバチカンの不必要な攻撃は、万人の間に橋を架けるのではなく、人々を分離し、家庭を隔てる壁を設置する意図を反映しているように見えます」と指摘。「性器の補完が結婚の絶対要件だと主張することで、カトリック教会は神に愛された神の子たち全員のあらゆる人間関係の中に働く神の力に制限を加えているのです」と訴えた。
ビル・ドノヒュー(カトリック系保守主義団体代表)
保守主義団体「カトリック連盟」のビル・ドノヒュー会長は、同性同士の結合の祝福に反対するバチカンの見解を支持する声明(英語)を発表した。
ドノヒュー氏は「問題は同性愛者そのものではなく、同性愛者同士の結合です」と主張。「同性愛者の話題は壁に突き当たっています」と語った。また「教皇フランシスコは、カトリック教会の内外を問わず、同性婚にゴーサインを出すよう同性愛者の活動家からかなりの圧力を受けています」と言い、「同性愛者同士の結合や結婚がカトリック教会に承認されることは決してないでしょう。交渉の余地すらありません」とした。