バチカン(ローマ教皇庁)教理省は15日、同性婚について「創造主の計画に沿わない」とし、カトリック教会として正当化したり、祝福したりすることはできないとする見解を示した。その一方で、神の計画に忠実に生きる意志を示している同性愛者個人への祝福は可能だとし、教会は同性愛者を尊敬と配慮を持って迎え入れるよう求められているとした。
この見解は、「教会は同性愛者間の結合(ユニオン、婚姻に類する関係)に祝福を授ける権限があるか」という質問への回答として、文書(2月22日付、英語)で公表された。文書には、回答として「否定する」と明記されており、その理由が記されている。
文書は、教会による「祝福」は「秘跡的」なものに属するとし、教会における重要な儀式に該当することを説明。たとえ安定した関係やパートナーシップであったとしても、婚外性交渉を祝福できないのと同様、同性間の結合も祝福できないとした。さらに、その関係に肯定的な要素が存在したとしても、「創造主の計画に沿わない結合の中に肯定的な要素が存在することであり、これらの関係を正当化し、教会の祝福の正当な対象とすることはできない」とした。
また、同性間の結合を祝福することは、結婚の秘跡において男女を祝福することの模倣や類似行為と見なされるが、「同性間の結合が、結婚と家族に対する神の計画に何らかの形で類似している、あるいは少しでも類似していると考える根拠はまったくない」と指摘。同性間の結合を認めないことは、不当な差別ではなく、教会が理解している典礼上の真理と秘跡の本質を示すものだとした。
しかしその一方で、同性間の結合を祝福しないことは、「啓示された神の計画に忠実に生きようとする意志を持つ個々の同性愛傾向のある人々に祝福を与えることを排除するものではない」と強調した。
最後には「教会は、神ご自身がこの世の巡礼者である神の子ら一人一人を祝福することをやめないことを思い起こす。なぜなら、神にとって『私たちは、私たちが犯し得るあらゆる罪よりも、神にとって大切な存在である』からである。しかし、神は罪を祝福しないし、できない。罪深い人間を祝福するのは、自分が神の愛の計画の一部であることを認識し、自分が神によって変えられるためである。実際、神は『私たちをそのまま受け入れることはあっても、私たちをそのままにしておくことはない』」と伝えた。
文書は、教理省長官のルイス・ラダリア枢機卿と次官のジャコモ・モランディ大司教が署名したもので、教皇フランシスコも事前に公表を承認しているという。教皇は、昨年10月に上映されたドキュメンタリー映画の中で、同性カップルにも婚姻に準じた法的権利を与える「シビルユニオン」を認めるべきだとする発言をしていた。カトリック教会はこれまで、シビルユニオンへの支持は「逸脱した行為を承認する」ことにつながるとしており、教皇の発言は論議を呼んだ。そのため日本でも東京大司教区が昨年11月、教皇の発言についての見解を示すなどしていた(関連記事:教皇のシビルユニオン支持発言「『婚姻の秘跡』の教義に変更なし」 東京大司教区が見解)。