米動画配信サービス「ネットフリックス」で今月3日から配信されているイエス・キリストを同性愛者として描いたコメディー映画が物議を醸している。配信中止を求める署名(ポルトガル語)が230万筆(31日時点)も集まり、映画を製作したブラジルのコメディーグループの事務所に火炎瓶が投げ込まれるなど、過激な行動に走る人まで出てきている。
物議を醸しているのは、「最初の誘惑」(原題:The First Temptation of Christ)と呼ばれる46分の短編コメディー映画。1988年に公開されたマーティン・スコセッシ監督の映画「最後の誘惑」(原題:The Last Temptation of Christ)をもじったタイトルになっている。映画の宣伝文には、「三十路のイエスは、サプライズゲストを連れて家族を訪れる。大混乱のクリスマススペシャル」といった表現がある。
映画を製作したのは、ブラジルのコメディーグループ「ポルタ・ドス・フンドス」。同グループが、キリスト教を笑いものにした映画を作るのは、これが初めてではない。昨年には、同じくネットフリックスで「最後の二日酔い」と題した映画を配信。宣伝文には、「聖書物語のパロディー『最後の二日酔い』では、目を覚ました使徒たちが、イエスが行方不明になっていることに気付く。使徒たちは、前夜のワイルドな最後の晩餐に起きた出来事の全貌を目撃することになる」と書かれていた。
「最初の誘惑」は、ブラジルのクリスチャンや著名人から激しい批判を浴びた。
ブラジルのジャイール・ボルソナロ大統領の息子で、自身も政治家であるエドゥアルド・ボルソナロ連邦下院議員は、同作について「われわれは表現の自由は支持するが、国民の86パーセントが信じていることを攻撃するほどの価値がこの作品にあるだろうか」と語った。
ブラジルはカトリックが多数派を占める国で、カトリック(約65%)とプロテスタント(約22%)を合わせると、人口の8割以上がキリスト教徒の国だ。
カトリック教会のエンリケ・ソアレス・ダ・コスタ司教(パウマレス教区)は、「冒とく的で下品で無礼だ」と抗議。同作のために、ネットフリックスの会員登録をキャンセルしたことを明かした。
一方、クリスマス前日の24日には、ポルタ・ドス・フンドスの事務所に火炎瓶が投げ込まれる事件が発生。負傷者は出なかったが、同グループは事件を受け、ツイッター(ポルトガル語)に、「国がこの増悪の嵐を乗り越え、言論の自由と共に愛が勝つと確信しています」などとコメントした。