米福音派の大衆伝道者フランクリン・グラハム氏が5月末から英国内の8都市をめぐるツアーで、6会場が貸し出し中止を決めた。グラハム氏は同性愛を認めない立場で、英国内の性的少数派のグループが貸し出し中止を求めて署名を集めるなどしていた。一方、グラハム氏は「英国中で福音を語ることを楽しみにしています」と述べ、ツアーを予定通り行う意向を示している。
グラハム氏の英国ツアーは、5月にはグラスゴー(30日)、6月にはニューカッスル(3日)、シェフィールド(6日)、ミルトンキーンズ(10日)、リバプール(12日)、カーディフ(14日)、バーミンガム(17日)の計7カ所を巡り、最後は10月4日にロンドンでフィナーレを飾る計画。
しかしこのうち、5、6月に巡る7都市で、ニューカッスルを除く6会場が1月末までに、予約されていた貸し出しを中止すると発表した。ニューカッスルの会場も現在、協議中だとしており、今後貸し出し中止が発表される可能性もある。10月に予定されている最後のロンドン大会は、2万人収容可能な多目的施設「O2アリーナ」が会場候補とみられている。しかし、同施設の広報担当者は米ニューズウィーク誌(英語)に対し、グラハム氏側との間で貸し出しに関する交渉は行われていないと明らかにした。ツアーの公式サイト(英語)は5日現在、各都市の開催会場すべてを「後日発表」としている。
こうした状況の中、グラハム氏は1日、ツイッター(英語)に次のように投稿し、ツアーを予定通り行う意向を示した。
「私は5月下旬と6月に英国中で福音を語ることを楽しみにしています。数百の教会がこれらの伝道活動に加わろうと祈り、計画しています。世界中の人々が、心の穴を埋める何かを探しています。イエス・キリストこそ、その答えです」
グラハム氏はこれまで、聖書は同性愛を罪としているとし、同性婚を強く批判する主張を展開してきた。また、ドナルド・トランプ米大統領の強力な支持者としても知られている。
同性愛をめぐる自身の見解が反発を招いていることを受け、1月28日にはフェイスブックに「英国のLGBTQコミュニティーへの手紙」(英語)と題した文章を投稿。「私が、皆さんのコミュニティーに対するヘイトスピーチを携えて英国にやって来るといわれていますが、それはまったく真実ではありません」。また「私は、誰かに反対するために英国に来るのではありません。すべての人のために語りに来るのです。福音は(すべての人を)包み込むものです」と訴えていた。(関連記事:フランクリン・グラハム氏の英国ツアー、一部会場が貸し出し中止)
グラハム氏の英国ツアーは、父である世界的な大衆伝道者、故ビリー・グラハム氏が1954年に開催した伝道大会「ロンドン・クルセード」に倣ったもの。3カ月にわたった同大会では、延べ200万人が来場し、4万人がイエス・キリストを信じる決心をした。ビリー・グラハム氏はこれが契機となり、世界的に知られる伝道者となった。
1月26日にフェイスブックに掲載した声明(英語)では、この父の歴史的な伝道大会に触れ、「父が初めて(ロンドンの)ハーリンゲイ区に来たとき、多くの教会から請願がありました。父を英国に入国させないでほしいというのです。歴史を通して、福音は一貫して反発を受けてきました」と語った。
「この世は混乱に満ちています。人々は人生の目的や平和、また生きる意味を探し求めていますが、その源はイエス・キリストだけなのです。私は英国に、政治について語りに行くのではありません。私は唯一の救いの道であるイエス・キリストの生涯と死、また葬られたが復活されたことを説くために行くのです」
同性愛をめぐる見解で会場が貸し出し中止を決めたのは、グラハム氏の英国ツアーだけではない。米伝道者ラリー・ストックスティル氏を主講師にして、6月にエジンバラで開催される予定だった地元の教会主催の大会も、ストックスティル氏の同性愛をめぐる発言が問題とされ、会場は貸し出し中止を決めた。
英国福音同盟(EA)で英国内を統括するピーター・リナス氏は4日、英タイムズ紙(英語)の取材に応じ、こうした傾向に対し「懸念」を表明。英国でクリスチャンに対する扱いが、まるで中国のウイグル人弾圧のようになってきていると警鐘を鳴らした。
ツアー最初の開催地であるグラスゴーの地元紙「グラスゴー・タイムズ」(英語)によると、グラハム氏は、貸し出し中止を決めた会場や地元議会がキリスト教を差別していると批判。「(貸し出し中止は)遺憾です。それは、ごく少数の人たちによるうわさや偽りの告発に基づいているからです」と指摘した。さらに「グラスゴーから撤退することはありません。必ず来ます」と述べ、貸し出しを中止した会場に対しては法的措置も検討していることを明らかにした。