米国の大衆伝道者フランクリン・グラハム氏が5月末から予定していた英国ツアーで、イングランド北西部リバプールの会場として予定されていたコンベンション施設「ACCリバプール」が24日、貸し出しを中止すると発表した。地元の性的少数派のグループが、開催中止を求めていたためとみられる。
ACCリバプールは声明(英語)で「この数日の間、われわれの価値観と相いれないと見なされる多くの主張を知るようになりました」とコメント。「これを考慮すると、われわれはもはや、言論の自由と、私たちの町に分断をもたらしているこのイベントの影響の間でバランスを取ることはできません」と述べ、貸し出し中止を決めたことを明らかにした。
この決定を受け、リバプールのジョー・アンダーソン市長はツイッター(英語)で、「われわれの町は、多様性のある町であり、LGBTQ+(性的少数派)のコミュニティーを誇りにしており、常にそうあり続けます」とコメント。「われわれは、宗教グループを含め、いかなる人々に対しても、憎悪と不寛容を不問にすることはできません」と述べ、貸し出し中止は「正しい」判断だったと語った。
一方、グラハム氏は28日、自身のフェイスブックに「英国のLGBTQコミュニティーへの手紙」(英語)と題した文章を投稿。「私が、皆さんのコミュニティーに対するヘイトスピーチを携えて英国にやって来るといわれていますが、それはまったく真実ではありません」と訴えた。
「私は福音を分かち合いに行くのです。それは、神が英国の人々を愛しておられる、また、われわれを罪から救うためイエス・キリストがこの地に来られたという良き知らせです」
一方、同性愛に対する見解については、「この摩擦は、神が同性愛を罪と定めているかどうかという点にあると思いますが、答えはイエスです」と明言。しかし「神はそれよりもさらに高い次元を行かれ、私も含めすべての人が罪人だと話されるのです。聖書は、すべての人は罪を犯しており、赦(ゆる)しが必要だと言います。罪に対する罰は霊的な死、神と永遠に分離されることです」と続けた。
その上で「私は、誰かに反対するために英国に来るのではありません。すべての人のために語りに来るのです。福音は(すべての人を)包み込むものです。私は憎しみに押し出されて(英国に)来るのではなく、愛に押し出されて来るのです」と述べ、ツアーでは性的少数派の人々も含め、すべての人を歓迎すると語った。
グラハム氏の英国ツアーは5月30日、スコットランド南西部の都市グラスゴーで始まる。10月4日に首都ロンドンの多目的施設「O2アリーナ」で行われるフィナーレを含め、約4カ月間で英国内の8都市を巡る。
グラハム氏のツアーを阻止しようとする動きは、イングランド中部の都市シェフィールドでもあったが、会場の運営者側は「個人や団体が法を犯さないのであれば、彼らが自由に発言する権利は尊重されるべき」として、開催を認めている。
グラハム氏が総裁を務める米国のビリー・グラハム伝道協会(BGEA)は27日、公式サイトで「来るフランクリン・グラハム氏のツアーに対する反対のただ中で英国のために祈る」(英語)と題した記事を掲載。ツアーを前にした25日には、英国全土の教会で祈祷会が開催され、3400人以上がツアーのために祈りをささげたことを伝えている。