米国の影響力のある大衆伝道者フランクリン・グラハム氏は12日、ドナルド・トランプ氏がワシントンで、米国の長い歴史の中でも最高のチームを作るだろうと述べた。
英国クリスチャントゥデイとのインタビューの中で、グラハム氏は、トランプ氏が米国の次期大統領に当選したことに、神が関与していることは疑いがないと語り、トランプ氏の最高裁判事の指名から生じる「非常に大きな衝撃」を予告した。
グラハム氏はまた、トランプ氏が1954年の「ジョンソン修正条項」を廃止すると、個人的な会話で話したことを明らかにした。ジョンソン修正条項は、教会の指導者たちが説教壇から政治候補者たちを推薦したり、反対したりすることを禁止する内容となっている。
教会内外で起こっている深刻な政治的分断を前に、グラハム氏は米国民に対し、今、新大統領を応援して「団結」し、1つとなるように呼び掛けた。出口調査によると、白人の福音派キリスト教徒たちの81パーセントがトランプ氏に投票しており、対するヒラリー・クリントン氏に投票したのは16パーセントにすぎなかった。これは、過去3回の米大統領選で共和党候補者が獲得した以上の福音派票だという。しかしその一方で、トランプ氏を支持しなかったキリスト教徒たちは、トランプ氏が大統領となることに関して、特に女性や少数派に対するトランプ氏の言葉遣いについて激しい憤りを表した。
グラハム氏は、トランプ氏が女性について悪名高いわいせつな発言をした当時とは違い、「変えられた人」だと述べた。トランプ氏は、福音派の票を求めることを自身の選挙活動の顕著な特徴とした。しかし、女性に痴漢行為をすることに関して公然と語ったり、既婚女性をくどこうとした自身の音声が録音された2005年の映像が表面化したりした後、大統領選から身を引くよう求める声が上がった。
「私はドナルド・トランプ氏を知っており、ご一緒する機会がたくさんありました」と話すグラハム氏は、投票日の前日(7日)にトランプ氏と個人的に話をしたと明かした。
「見たことで人々は判断します。政治家たちは笑顔をつくるのが上手で、公の場にいるときと家の中では別人です」
グラハム氏は、トランプ氏がこうした政治家たちとは対照的で、テレビに出演しているときと私生活で裏表がない人物であると述べた。
「彼は多くの政治家たちのようには洗練されていません。彼はやや粗削りです。しかし彼は、彼自身が語る通りの人です。人々は彼が非常に力強い人であり、非常に強いこと、とても良い家族を持ち、素晴らしい子どもたちがいることを理解する必要があります。彼は私たちが長年見てきた中でも、多分、最高のチームの1つをワシントンで作るでしょう」
グラハム氏は神が今回の選挙に関与したことには疑いがないと述べた。「福音派の人々の圧倒的多数はドナルド・トランプ氏を支持しました。彼が米国ばかりでなく、世界中でクリスチャンを支持すると語ったからです」
「それで、キリスト教が世界中で、単にイスラム過激派によってだけでなく、世俗主義によっても攻撃されているのを私たちが見るとき、キリスト教信仰を進んで守ろうとする指導者を持つことは私たちを元気づけてくれます」
グラハム氏は、4年前の大統領選において、最大3500万人の福音派キリスト教徒が投票しなかったことを示す調査結果を引用した。投票に行くようにクリスチャンたちを励ますために、「ディシジョン・アメリカ・ツアー」で全米50州を訪問するようにグラハム氏を奮い立たせたのはこの事実だった。
「それ(前述の調査結果)が、投票するようにと人々を励ますために、私が全米50州に行き、州議事堂で祈った理由です。私は彼らにどの候補者のために投票すべきかを話しませんでした。私は投票前に祈ってくださいと語りました。神があなたにどの候補者のために投票すべきかを告げるでしょう。しかし、投票してください。家に留まってはいけません。もしあなたが家に留まるなら、私たちはこの国を失うからです」
「私は多くのクリスチャンがその激励を聞いたと思います。私たちは福音派の80パーセント以上がトランプ氏に投票したことを知っています」
グラハム氏は、トランプ氏とは8年前から個人的に面識があるという。そしてグラハム氏はその期間に、「彼(トランプ氏)の中での変化」を見たと語った。グラハム氏は、「3年前、彼は私の父(ビリー・グラハム氏)の95歳の誕生パーティーに来ました。そして彼は、私の父がニューヨークで説教していたとき、何度か父と会いました」と述べた。
今回の選挙結果を積極的に受け止める著名な福音派指導者は、グラハム氏だけではない。米国の著名な福音派神学者の1人であるウェイン・グルデム氏や、ベテル教会(カリフォルニア州)のビル・ジョンソン牧師、また、リバティー大学(バージニア州)のジェリー・ファルウェル・ジュニア学長らが、トランプ氏への支持を示している。
しかし批判もよく聞かれる。「ポスト福音派」として時折言及される、キリスト教活動家のシェーン・クレイボーン氏や、ビル・クリントン元米大統領の信仰的助言者だったバプテスト派のトニー・カンポロ牧師らは、イエスよりもトランプ氏を優先していると指摘して、福音派を非難した。クレイボーン氏は、今回の大統領選後、多くのクリスチャンは今、霊的に「ホームレス」だと述べた。クレイボーン氏はこれらのクリスチャンたちに「福音派」という言葉を捨て、「イエスに従う者たち」という彼らのアイデンティティーを取り戻すように呼び掛けた。
今回の選挙結果に関して、非常に多くの人々を驚かせた1つの面は、トランプ氏の道徳性が、多くの指導的立場にあるクリスチャンにとって明らかに問題となっていなかったことである。
リバティー大学の一部の学生たちは、トランプ氏がファルウェル学長から受けた支持は、自分たち学生がトランプ氏を支持することを意味していないと示すための陳情書を提出することさえした。陳情書には、「キリスト教とある政治家を結び付けることは、イエス・キリストの福音を損なうことです。しかし、ドナルド・トランプ氏は単に政治家の1人ではありません。彼は他の人たちの悪口を言うことや、自分の数々の罪を自慢することで有名になりました。ドナルド・トランプ氏は悪い大統領候補者であるだけではなく、実に彼は、私たちがクリスチャンとして反対すべきことを積極的に推進しているのです」と書かれていた。
しかしグラハム氏が強調するのは、トランプ氏の評価は、彼が自身の周りに置いている人々がどういう人々であるかを見ることによって行われるべきだ、ということである。そしてグラハム氏は、トランプ氏に意見を述べる「少数」の牧師たちを知っていると述べた。選挙期間中、トランプ氏は自身に助言をする福音派の牧師たちの「評議会」を指名した。グラハム氏もこの評議会に加わるように依頼を受けたが、ディシジョン・アメリカ・ツアーの最中であり、この祈りの集会が政治的であることを望まなかったために丁重に断ったという。
しかしグラハム氏は、大統領選はここ数年で「かなり」変わったと述べた。
グラハム氏は、「トランプ氏の人生に大きな影響を与えた幾人かの牧師たちを私は知っています。人々は長い期間を経る中で変わります。私は、ドナルド・トランプ氏が変わったと思います。同時に今、もしトランプ氏が怒るなら、彼は『くそ!』、あるいは『こんちくしょう!』、あるいは自分の不快感を表す他の言葉を使うでしょう。しかし私は、彼を信頼しています。トランプ氏が何かを発言するとき、彼はそうするつもりなのだと私は思います。もしトランプ氏が何かを行うと言うなら、彼はそれを実行するでしょう」と語った。
グラハム氏によると、トランプ氏の人柄を判断する鍵は、彼のチームにどんな人々がいるかを見ることである。
グラハム氏は、「ドナルド・トランプ氏は熱心な福音派の信者たちを自分の周りに置いており、1人のクリスチャンとして、それはとてもうれしいことなのです」と述べた。
米タイム誌は、「福音派キリスト教徒は陰の実力者となるだろう」という見出しの記事で、超保守的な福音派である次期副大統領マイク・ペンス氏の重要性を伝えている。タイム誌によると、ワシントンでは、ペンス氏が「国内政策と外交政策」を担当するといわれている。「トランプ氏は何を担当するのでしょうか?」という質問には、「米国をもう一度偉大にすること」という答えが返ってきたという。
グラハム氏は、「ただ神のみが本当に人の心をご存じです」と言い、トランプ氏をクリスチャンと見なすか否かに関しては言及しなかった。しかし、「あなたはその人が周りに置いている人々によって、その人について多くのことを見分けることができます。私たちの現在の大統領はキリスト教徒であると主張しましたが、彼の周りの人々を見る限り、その主張を証拠立てるものを見ることはありません」と語った。
グラハム氏はまた、ペンス氏とも面識があり、彼とも共に時間を過ごしたという。「彼(ペンス氏)は神の人であり、彼は非常に熱心な福音派です。ドナルド・トランプ氏は何人かの熱心なキリスト教徒を周りに置いており、それはとても望みを与えてくれます」
グラハム氏はこれを民主党と比較した。「もし、ヒラリー・クリントン氏と民主党のことを考えてみるなら、私はホワイトハウスにたった1人の福音派のキリスト教徒がいることも知りません。私はクリントン氏の陣営にたった1人の福音派のキリスト教徒がいることも知らないのです。誰もいません」
福音派がトランプ氏を支持した主要な要素の1つは、保守的で人工妊娠中絶反対の立場の最高裁判事たちを指名するという彼の約束であった。そしてグラハム氏は、トランプ氏のリーダーシップの下で最高裁は「安泰である」と述べた。
グラハム氏は、新たな最高裁判事は「保守的で、憲法論者であり、憲法から解釈することを信じ、裁判所で法律を作るようなことはしない判事たちとなるでしょう」と述べた。「クリントン氏は進歩的な人たちが最高裁判事となることを望みました。これらの人々は法律を作り、米連邦議会で過ごすために自分の職務を用いる人々となるでしょう。それで、私は(トランプ氏のリーダーシップの下で)最高裁が安泰だと考えるのです」
「次期大統領トランプ氏は、来年2月に1人の判事を指名します。数年以内にさらに2、3人が指名されることでしょう。それはこの先何年もこの国に大きな影響を与えるでしょう」
グラハム氏は、トランプ氏がジョンソン修正条項に関して、「廃止に向けて働き掛ける」と約束したと述べた。
1954年、当時上院議員であったリンドン・ジョンソン元米大統領は、教会のような組織に対して、政治候補者たちを支持したり、あるいは反対したりすれば、その税免除資格を剥奪するとする修正案を提出した。
グラハム氏は、「彼(トランプ氏)は私に対して、その廃止に向けて働き掛けると話しました。それは大きな変化となるでしょう。私は、ジョンソン修正条項が愚かなものだったと考えています。それは当時の黒人牧師たちが、ジョンソン氏に反対の声を上げることを彼が望まなかったという意味で、やや人種差別的でした」と述べた。
グラハム氏や福音派の他の多くの人々は、教会や他の宗教団体の政治への関わり方に大きな影響をもたらすだろうと、その変化の可能性を歓迎している。
グラハム氏は、「長年、ジョンソン修正条項は米国の状況に影響を与えてきました。そしてトランプ氏は、『私はそれを廃止します』と言う最初の人なのです。私はそのことを感謝しています」と述べた。
トランプ氏の大統領選勝利の発表以降、トランプ氏が大統領になることに対する抗議活動が米国中で行われている。グラハム氏はデモ活動に関して、「この国に無政府主義者の小集団があります」と述べた。「彼らは単に米国内だけでなく、世界中で無秩序を望んでいます。英国にもそういう人たちがいます。そして彼らはほんの小集団にすぎません。もちろん、彼らの側が勝たなかったので、彼らは非常に不幸せな人々です。それで、彼らは全てを破壊し、罪のない人々を傷つける機会としてそれを用いるのです」
グラハム氏は、トランプ氏の当選を英国民による欧州連合(EU)離脱の決断と比較した。
「EUはとてつもなく大きな経済的問題を抱えています。英国人はEU離脱に投票し、それは彼らの決断です。私は他の国々もEUを離脱するだろうと思っています。私はある国々にとってEUが望ましいとは思いません。そして私はどこかの国にEUが適しているという確信がありません。特に、移民が中東から来ることを見るときにそうなのです。彼らがEU加盟国の1つに入り込むや否や、実に彼らは自分が望むどの国にでも殺到することができるのです。欧州には、政治家たちが解決するように努める必要のある幾つかの大きな問題を抱えています。英国人は船が沈んでいるとき、それを降りるのがより良いと気づいた点で十分に賢いのです」
しかしグラハム氏は、今は米国人にとって、トランプ氏を応援するために協力し、1つとなる時だと語った。
「私たちは、人々の意思で選ばれた私たちの指導者を応援するために団結する必要があります。私たちは民主主義を採っています。それで、オバマ大統領が選ばれたとき、私は彼の政策が私たち教会に損害を与えることを恐れたので、うれしくありませんでした。そして実際にそういう結果となっています。しかし私たちは彼を支えました。彼は私たちの大統領であり、私たちは彼をサポートしました。彼はまだ私たちの大統領です。しかし私たちは、新しいリーダーシップを持ちます。私たちは米国人として団結する必要があります。癒やしの必要があります。前進しましょう」