ジョー・バイデン米大統領が、海外の中絶支援団体への米政府による資金援助を禁じた政策を撤回したことを受け、米国のカトリック大司教らは「理性に反し、人間の尊厳を侵害するもので、カトリックの教えとは相いれない」と強く非難するコメントを発表した。
バイデン氏は1月28日、発展途上国などで家族計画の方法として中絶を行ったり、中絶を積極的に推進したりする海外の非政府組織(NGO)に対し、米政府が資金援助することを禁じた「メキシコシティ政策」を撤回する大統領覚書(英語)に署名した。
メキシコシティ政策は1984年、当時のロナルド・レーガン大統領(共和党)が初めて導入。以降、政権交代が起こる度に、民主党政権下では撤廃、共和党政権下では復活が繰り返されてきた。共和党のドナルド・トランプ前大統領は就任翌日に、民主党のバラク・オバマ政権下で撤廃されていた同政策を復活させていた。
バイデン氏は大統領覚書で、「米国また世界で、女性と女児の性および生殖に関わる健康と権利を支援することが私の政権の方針です」と強調。メキシコシティ政策については、「海外の開発援助におけるこれらの過度な条件は、女性の健康や、ジェンダーに基づく暴力を防止し対応するプログラムを支援する能力を制限するもので、世界的なジェンダー平等を推進する米国の努力を弱体化させています」とした。
メキシコシティ政策の撤回を受け、米国カトリック司教協議会のプロライフ活動委員会委員長であるジョセフ・F・ナウマン大司教と、国際正義と平和委員会委員長のデイビッド・J・マロイ司教は、同協議会の公式サイトに非難するコメント(英語)を発表した。
バイデン氏はカトリック信者として知られているが、ナウマン大司教とマロイ司教は「バイデン大統領の最初の公的な行動の一つが、発展途上国における人命の破壊を積極的に推進するものであることは憂慮すべきことです」とコメント。「この行政命令は、理性に反し、人間の尊厳を侵害するもので、カトリックの教えとは相いれないものです」と強く非難した。
「私たちと、私たちの兄弟なる司教たちは、この行動に強く反対します。私たちは、大統領が胎児を含む最も脆弱(ぜいじゃく)な人々を優先し、善のためにその大統領執務室を用いるよう強く勧めます」
その一方で2人は、カトリック教会は「世界最大の非政府系医療提供者」だと強調。中絶反対の立場を取りつつ、世界の女性の健康促進のためにバイデン政権と協力する用意はできていると述べた。