現地時間20日正午(日本時間21日未明)、民主党のジョー・バイデン氏が米国の第46代大統領に、カマラ・ハリス氏が第49代副大統領に就任した。
今月6日に発生した米連邦議会議事堂の占拠事件を受け、首都ワシントン全域で厳戒態勢が敷かれる中、就任式は議事堂で執り行われた。治安上の理由と新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、ナショナルモールは通常よりも少ない人出となった。
多くの注目が集まる中、78歳のバイデン氏は米国史上最高齢の大統領となり、ハリス氏は、女性、黒人、アジア系として米国史上初の副大統領となった。
こうした中、米国のキリスト教指導者らがバイデン新政権に対する政治的な視点を示し、多くの前向きなメッセージを語った。以下に、トランプ前政権からバイデン新政権への移行を歓迎する米国の著名キリスト教指導者5人の声を挙げる。
◇
ラッセル・ムーア氏
米南部バプテスト連盟倫理宗教自由委員会委員長のラッセル・ムーア氏はツイッター(英語)で、「ジョー・バイデン大統領、おめでとうございます。大統領が祝福と知恵と健康に恵まれ、この国を成功裏にリードできるよう祈ります」と新大統領への祝辞を述べた。
ムーア氏はここ数年、トランプ政権を批判し続けてきた。最近も自身のウェブサイト(英語)で、もし自身が連邦議会の議員だったら、「私は(トランプ氏の)弾劾に投票していただろう」と述べている。
「また、もし私が上院議員だったら、(トランプ氏の)有罪に投票することでしょう。もし必要なら、自分の職を失うことすらいとわないでしょう。実際、私は必要であれば喜んでこの職をささげます」
フランクリン・グラハム氏
トランプ政権の保守的政策を一貫して支持してきた大衆伝道者のフランクリン・グラハム氏は、自身のフェイスブックにコメント(英語)を投稿し、就任式に際し暴力による抗議に訴えないよう促した。
「今日、この国で新大統領が就任するに当たり、ワシントンと全米の州都で暴力が発生することが懸念されています。私はクリスチャンたちに、この日を祈りの日にするよう勧めます。平和と安寧のため、また新しい指導者であるジョー・バイデン次期大統領とカマラ・ハリス次期副大統領のために祈りましょう」
グラハム氏は昨年12月、トランプ氏について「米国と世界中の何百万人もの人々に平和と繁栄をもたらした偉大な大統領の一人として歴史に名を残すでしょう」と述べており、トランプ氏への感謝のメッセージ(英語)も投稿した(写真:フランクリン・グラハム氏、トランプ氏支持継続を表明しつつバイデン氏のためにも祈り呼び掛け)。
「大統領、そしてファーストレディーのメラニアさん、これまでの4年間、ありがとうございました。お二人がこの国のために行ってくださったすべてのことにも(感謝します)。ご夫妻が人生の新しい章を開くに当たり、神がご夫妻やご家族と共にいてくださいますように」
ウィリアム・バーバー2世
進歩主義的なキリスト教指導者で、「貧者の行進」(米国の貧困層が経済的平等を求めて1968年に起こした運動)の共同議長も務めているウィリアム・バーバー2世は、ツイッター(英語)に次のように投稿した。
「この数年間、殺害事件は連邦議会議事堂の外で起きていましたが、1月6日は議事堂そのもので起こりました。こうなったからには、一定レベルの除去が必要です。慈悲と正義は真っ向から対立するものではありません。実際、両者は米国社会を3度目に建て直すに当たって柱となるものです」
バーバー氏はこれまでトランプ氏に批判的な立場を取ってきた人物で、就任式の翌21日に行われた大統領就任礼拝では説教を取り次いだ。この礼拝は通常、ワシントン大聖堂で開催されるが、今年はオンラインで開催され、バイデン氏とハリス氏はホワイトハウスから参加した。
ジョニー・ムーア氏
福音派の立場で信教の自由を擁護し、トランプ政権ではキリスト教指導者会議の議長として非公式に助言してきたジョニー・ムーア氏は、ツイッター(英語)でバイデン氏とハリス氏に祝辞を述べた。
「バイデン大統領、第46代大統領就任おめでとうございます。また、カマラ・ハリス副大統領、就任おめでとうございます。私と数千万人に上る福音派信者の祈りにご期待ください。この国とその指導者のために祈る忠誠心は政治と無関係です」
ムーア氏はそう述べ、次のように記されている旧約聖書のエレミヤ書29章7節を引用した。
「わたしが、あなたたちを捕囚として送った町の平安を求め、その町のために主に祈りなさい。その町の平安があってこそ、あなたたちにも平安があるのだから」
米国際宗教自由委員会(USCIRF)の委員でもあるムーア氏はまた、新約聖書のテモテへの手紙一2章1~2節も引用した。
「そこで、まず第一に勧めます。願いと祈りと執り成しと感謝とをすべての人々のためにささげなさい。王たちやすべての高官のためにもささげなさい。わたしたちが常に信心と品位を保ち、平穏で落ち着いた生活を送るためです」
ベス・ムーア氏
福音派の女性聖書教師であるベス・ムーア氏は20日朝、就任式に先立ちツイッター(英語)で、政治権力が一時的なものにすぎないことをフォロワーに訴えた。
「国々の支配者は2千年の間、度々入れ替わりましたが、キリストの教会は今も存続しています。私たちは4年前、自分たちに降りかかるすべてのことを知っていたわけではありませんでしたし、今から後の時代のことも分かりません。でも、教会の使命が変わることはありません。それはキリストを知り、キリストを知らせることです。今この時に今置かれている場所で、塩と光になるのです」
トランプ氏に批判的なムーア氏は昨年12月、トランピズム(トランプ氏の政策や発言の根底にある考え方や政治姿勢)の危険性についてツイッター(英語)で警鐘を鳴らし、次のように述べていた。
「私は63歳半ばになりますが、クリスチャンにとってトランピズムほど魅惑的で危険なものを、私は米国のどの州でもまったく見たことがありません。キリスト教ナショナリズムは神に属するものではありません」