米国の影響力ある牧師で作家でもある神学者のジョン・パイパー氏が、ドナルド・トランプ大統領を支持するクリスチャンを批判する記事を掲載したことで、さまざまな立場のクリスチャンが反応し、賛否を呼んでいる。
宣教団体「デザイアリング・ゴッド」の創設者であるパイパー氏は22日、同団体のブログに米大統領選に関する記事(英語)を掲載した。パイパー氏はその中で、「リーダーの致命的な影響は政策によってもたらされるものであって、人格ではないと考えるのは甚だしい誤りだと思います。目に余る自画自賛と下品さ、不道徳や党派心の強さは、その人自身を罪ある者とするだけでなく、国家を腐敗させるものです」とつづった。
パイパー氏はこの記事の掲載後、自身はトランプ氏にもバイデン氏にも投票しないことを明らかにしたが、クリスチャンの現状に「困惑」しているとした上で、次のように述べている。
「非常に多くのクリスチャンが、注目を集め、傲慢で、文化さえ変えてしまうほどの罪の断片をまき散らすことの破壊的な影響を過小評価して、自分たちは人の命を救い、自由を守っていると思い込んでいます」
「命と自由を守る政策や法律の方が、どういう人であるかよりも尊いかのように行動することによって、クリスチャンたちは信仰を持たない人たち(彼らもまた困惑しています)に偽りを伝えているのです。この偽りを毎年のように伝えることによって、教会は多大な対価を払っています。そして、今後も払い続けることになるでしょう」
パイパー氏の記事は、著名な米女性伝道者ベス・ムーア氏や米プロフットボールNFLのスター選手であるベンジャミン・ワトソン氏をはじめ、クリスチャンの著名人や、キリスト教指導者から政治指導者に至るまで幅広い反応を引き起こした。
ムーア氏はツイッター(英語)で、パイパー氏の主張は、彼が常々政治に対して取っているアプローチと一貫していると指摘した。
「ジョン・パイパー氏への返信。昨日の記事は、20年以上前にお会いした(ときの)ジョン・パイパー氏(の見解)と何ら変わっていませんでした。100パーセント一貫しています。もし皆さんが、不快感を与えない説教だけを語る説教者を求めているのなら、聖書を語らない説教者を探すべきです。そういう説教者は、そこら中に大勢います。お好きなだけどうぞ」
「こうした狂気の沙汰の影響が残る中、なぜ誰も警告してくれなかったのなんて間違っても言わないでくださいね」
ムーア氏は別のツイート(英語)で次のようにも述べている。
「福音派と共和党が結婚したことによって、計り知れない弊害がもたらされました(相手が民主党でも同じことだったでしょうが)。私の世代は、この汚らわしい結婚で生まれた最初の子どもです。(宗教的な)教えにどっぷり漬かり過ぎて、私たちには福音派と共和党が一心同体に見えるのです。でも、それは間違っています。教会の結婚相手はキリストだけです」
ベストセラー作家のジョエル・リチャードソン氏はツイッター(英語)で、パイパー氏を「敬愛している」としつつも、「中絶は今回の選挙に絡む諸々の要因とは別物」と指摘。「トランプ大統領の罪と、社会的に受け入れられ得るところの、罪なき子羊たちの大量虐殺(中絶)とを一緒くたにするのは余りにも乱暴だ」と反論した。
保守派女性キリスト教評論家のアリー・ベス・スタッキー氏はツイッター(英語)で、次のように述べリベラル派に釘を刺した。
「今日、ジョン・パイパー氏を称賛している左派は、結婚や性、中絶、社会主義に関するパイパー氏の見解にひどく失望するでしょう。パイパー氏はリベラルではないからです」
これとは対照的に、福音派のネットワーク「ゴスペルコアリション」の評議員を務めている黒人牧師のタビティ・アニャブワイル氏はツイッター(英語)で、「私がこれまでに読んだ(パイパー氏の)ブログ記事の中で最高のものかもしれない」と称賛した。
NFLのスター選手で、自身の信仰についても公に語るベンジャミン・ワトソン氏はツイッター(英語)で、パイパー氏の記事に賛意を示して次のように語った。
「イエス様に忠実であることが中絶や傲慢がもたらす死と相いれない理由を、私は笑顔をもって近隣の住民に説明するつもりです」