カトリック仙台司教区の男性司祭から約40年前に性的被害を受けたとして、仙台市の鈴木ハルミさん(67)が9月24日、同教区と男性司祭、2次被害を加えたとする男性司祭を相手取り、計5100万円の損害賠償を求める訴訟を仙台地裁に起こした。代理人弁護士によると、カトリック聖職者による性暴力の被害を訴える訴訟は国内で初めてという。25日付の河北新報などが伝えた。
鈴木さんによると、24歳だった1977年、家庭問題について相談していた司祭から性虐待を受けた。カトリック信者であった鈴木さんにとって、司祭は「神の代理人のような立場の人」であり、自分を責めることしか考えられなかったという。その後も長く罪の意識にさいなまれ、現在も心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんでいる。
2015年、主治医から「あなたは悪くない」と言われたことがきっかけとなり、自ら望んだ行為ではない「虐待」であったことを初めて認識したという。翌年、教会側に被害を申告。第三者委員会による調査が行われ、「(被害が)存在した可能性が高い」とされたものの、司祭の責任は問わなかった。調査報告を受けに教会を訪れた際、信頼していた別の男性司祭から「合意の上でやった」などと言われ、2次被害も受けたという。
提訴後の記者会見で鈴木さんは、「失った尊厳を取り戻すための裁判。同じように暗闇で息を潜めている被害者に声を届けたい」(同紙)と語った。
鈴木さんは、聖職者による性虐待被害者の世界的ネットワーク「SNAP(スナップ)」の日本とアジアの窓口役も務めている。6月に長崎市で開催された「カトリック神父による性虐待を許さない会」の発足集会でも自身の被害体験を話し、「被害者が、ビクティム(犠牲者)からサバイバー(生き残った人)になるためのお手伝いをすることは、ものすごく生きがいがある。真実を語ることが、自分の人生を変えていく」などと語っていた。