イタリアで長引く干ばつを受け、バチカン(ローマ教皇庁)は25日、教皇フランシスコの環境重視の教えに従って、サンピエトロ広場にある有名な噴水を含め、バチカン市内にあるすべての噴水を停止した。
バチカンの報道官とバチカン放送(英語)は、この決定が2015年の回勅「ラウダート・シ」で述べられている教皇フランシスコの環境保護に関する危機意識と一致するものであると述べている。教皇は回勅で、浪費社会を公然と非難し、飲料可能なきれいな水の大切さを強調していた。
イタリアで現在進行中の干ばつは、この60年間で3番目に降雨量が少なかった今春から始まった。これまでに国内の農地の3分の2に被害をもたらし、被害額は約20億ユーロ(約2600億円)に上るという。
今回の措置では、17世紀の著名な彫刻家が制作したバロック様式の2つの噴水を含め、バチカン市内にある約100の噴水すべてが停止された。バチカンのグレッグ・バーク報道官はロイター通信に、このような措置は初めてだとし、緊急時におけるローマ市との連携を示すものだと述べた。
バーク氏はまた、「この決定は、浪費は許されず(環境保護のために)時には進んで犠牲を払う必要もあるという、教皇の環境に関する考えに非常に一致しています」と補足した。
バチカン放送は、浪費文化や使い捨ての習慣がかつてないレベルに達していることを、回勅「ラウダート・シ」は指摘しているとし、今回の干ばつは、人間の生活や地上、海洋の生態系を支える上で不可欠なきれいな水の存在が、非常に重要であることを思い起こさせると伝えている。
2年にわたって平均降雨量を下回る状況が続くローマ市は、大幅な給水制限の実施を検討しており、市内ではすでに約2500の噴水式水飲み場が停止されている。イタリア北部では2つの州が、干ばつによる緊急事態を宣言しており、南部では今月初め、乾燥のために森林火災が発生し、何百人もの人々が避難する事態になった。
酪農家や、オリーブ、トマト、ワイン用ブドウなどを栽培する農家が、干ばつの影響を最も受けており、国内の農業組合「コルディレッティ」は、被害が広がれば、農作物の価格高騰の恐れがあると警告している。