宿泊はソフィア大学の目と鼻の先。若者、学生が多く、大きな公園もあり、ソフィアでの滞在地としては非常に安全で静かな場所であった。学校があるため、大通りに面してバスも停まる。地下鉄もすぐ下なので、どこへ行くにも便利である。
カフェやレストランも点在し、本屋にマクドナルド、スーパーもある。そして、街のシンボルでもあるアレクサンドル・ネフスキー大聖堂へは、道を1本挟んで10分ほどの好立地。宿泊地としては、ソフィア大学前は大変オススメの場所である。
遠目に金の大きなドームが見えてきて、近づくにつれてその大きさに圧倒されながら正面に回り込む。この聖堂は、ブルガリア最大、最美、正教会の聖堂としても世界最大級とされるネオ・ビザンチン様式の建築で、ブルガリア総主教の本拠地でもある。中央の金のドームを含め、12のドームを備え、丸みのある姿は優美で柔らかく、ブルーグリーンを取り入れたことにより、さらに柔らかさが強調されているように見えた。
この聖堂は、ロシアの皇帝アレクサンダル2世がオスマントルコからの支配を解放した契機に、犠牲になったロシア兵士を追悼するために建てられ、1912年に完成した。聖アレクサンドル・ネフスキーは皇帝の守護聖人であったことから、その名が付けられた。
大聖堂内は、非常に広く大きくて3170平方米を有し、5千人もの人を収容できるとのことである。天井は45メートルもあり、恐ろしいくらい高い。鐘楼を含めると、50メートルを超えるとのことだ。
床は白と黒の大理石の市松模様のような作りで、イタリアから持ち運ばれたものである。壁はもちろんイコンやフレスコ画で埋め尽くされている。そのフレスコも大きく、豪華に雄大に描かれているのにただ立ちすくむ。観光客はしばらく座って上を見つめ、動けなくなるほどである。
一番高いドームからは、大きく荘厳なシャンデリアが吊るされ、一層聖堂内を煌(きら)びやかに見せる。中央のイコノスタス(聖なる壁)は、大理石で作られており、珍しい造りだった。イコノスタスに向かって右には、国王の王座、総主教座も用意されている。祭壇は3つあり、中央はロシア、向かって右はブルガリア、左はスラヴ諸国にささげられたものであるとのことだ。
首都ソフィアの地図をよく見ると、東側には若者たちを育むソフィア大学、西側には、旧共産党のビル群を再利用した大統領府や国会、官庁など、国の施設が建ち並ぶ。アテンドしてくれた女性は、民主化したとはいえ、共産党時代の残った政治家や2世が引き継ぎ、変わっていないと話していた。
北側には、鉄道の中央駅、バスターミナル、墓地が、南側には宮殿やスタジアムや公園などの娯楽施設がある。まさにその中心に位置するのが、アレクサンドル・ネフスキー大聖堂だ。大聖堂のドームはソフィア市内のはるか遠く数十キロ離れた位置からも見ることができるとのことだ。
夕方以降、ソフィアの街は、車の渋滞が深刻であるらしいが、皆この聖堂の横の大通りを通る。夜半過ぎは食事に出掛けた老若男女が聖堂の前のロータリーを行き交う。恐らくほとんどの人がこの聖堂を1日1回は見る位置にあるのだと思う。
分断されているであろう、社会主義を知らない世代と、知っている世代の交差点でもある気がした。
正教の祈りは、このブルガリアにおいてどの時代も調和という立場を貫き、今日まで国民の85パーセントが信徒であり、しっかり受け継がれている。今もこの役目を担い、ソフィアの街の中心に建つ。
アレクサンドル・ネフスキー(1220~63)
ノヴゴロド公国の公を経て、ウラジミール大公国の大公となる。中世ロシアの英雄と称され、1547年ロシア正教会から列聖され、正教会の聖人となる。
アレクサンドル・ネフスキー大聖堂
拝観時間:7:00~19:00(無休)
拝観料:無料
ガイド料:50レヴァ
毎日に加え日曜日と祝日に行われる奉神礼以外の洗礼式や結婚式、お葬式などは執り行われない。
次回予告(11月26日配信予定)
ブルガリア巡礼紀行第3弾、ソフィア中心から20分ほど、ヴィトシャ山麓にある世界遺産のボヤナ教会を紹介します。お楽しみに。
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