1月22日に76歳で召天した、牧師で元衆議院議員の土肥隆一氏の追悼礼拝(土肥隆一追悼礼拝実行委員会主催)が26日、東京都新宿区のウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会で執り行われた。政界関係者や親交のあった国内外の教会関係者らが駆けつけ、土肥氏をしのんだ。日韓基督教議員連盟、東京聖市化運動(Holy Club)本部、東京キリスト教学園、日本CBMCが共催した。
この日司会を務めた同教会主管牧師の峯野龍弘氏が、伝道者、政治家、福祉活動家として生涯をささげた土肥氏の経歴を紹介した後、元韓国副総理・梨花女子大学元総長の張裳(チャン・サン)氏が登壇し、ローマ6:3~5を本文に「キリストと共に死に、キリストと共に生きる」と題して追悼メッセージを語った。張氏は、「神様はその時代の良心を準備してくれる。土肥先生は神様が準備された良心に用いられた人。神様は、先生の生涯に介入し、先生を用いられた」と話した。
幼少期、植民地だった韓国で暮らした経験を持つ土肥氏にとって韓国は、ずっと重い課題だった。張氏は、そんな土肥氏にとって日韓キリスト教議員連盟代表会長の金泳鎮(キム・ヨンジン)氏との出会いは神の摂理だったと話す。「多くの人々は、韓国と日本を、『近くて遠い国』だと思っている。クリスチャンの課題は、この2つの国が『近くて近い国』になることで、土肥先生はそうなるための橋を作った」と証しした。
また、土肥氏を「政治家としては、あまりに悲しく、悔しい生涯。しかし、信仰者としては、恵みに満ちた生涯」と話し、その恵みによって土肥氏の全生涯は聖いものとなったと語った。その上で、信仰者がどのように生きるべきかを詳しく記したローマ6:5に土肥氏の姿を重ねることができると説いた。
張氏は、「パウロは、神の恵みの中で生きることは『主の栄光を喜ぶ』ことを意味し、それは、苦難の中においても同様」だとし、ローマ5:3、4「苦難な忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む」を引用した。「3パーセントの塩が海を腐らせないように、土肥先生の神の義と国を求める信仰が、韓国と日本の間を腐らせない3パーセントの塩だった」と説き、「和解と赦(ゆる)しの精神によって、日韓が『近くて近い国』になると信じる」と結んだ。
日韓キリスト教議員連盟代表会長の金泳鎮氏は、日韓問題の一番大切な時期に召されてしまったと悲しい胸の内を明かした。土肥氏と目を合わせた瞬間から心が通じ合い、主にあって兄弟となり、日韓のために心を一つにしてきたと語り、土肥氏が、三・一運動や、8月15日の光復節の集会には毎年必ず参加していたことなどを振り返った。
金氏は、小泉政権の時に歴史教科書をめぐって国会前でハンガーストライキを行ったときも、土肥氏がそばで祈ってくれたと語った。この時、金氏が「先生の立場が悪くなるからやめてほしい」と言っても、土肥氏は「韓国の国会議員がこうしているのに、自分の利益のためにやめることができますか」とその場を離れなかったという。
「土肥先生は、正しい歴史認識を持って、正義を持って歩まれた。先生が成し遂げられなかった働きを、次の政治家に受け継いでもらいたい」と述べた。また、同連盟では日韓の平和のために、新しい働きを考えていることを明かし、「われわれの新しい出発のために祈ってください」と訴えた。
この日は、急きょ、菅直人元総理も参加し、弔辞を述べた。菅氏は、「日韓の問題が良い形で進むように、土肥さんを通してやってきた。もっといろいろなご指導を受けたかったが、天に召された中で、私たちを応援してくれていると思っている。末長く私たちを見守ってくれるように願っている」と語った。
この後、元衆議院議員の柴崎正直氏、東京キリスト教学園理事長の廣瀬薫氏、東京聖化運動本部会長の呉永鍚氏、日本CBMC理事長の近藤高史氏が弔辞を述べた。
ビリーグラハム伝道協会(BGEA)アジア地区代表のチャド・ハモンド氏がBGEA会長のフランクリン・グラハム氏の弔辞を代読した。グラハム氏は、東日本大震災後のサマリタンズ・パースの働きを進める上で土肥氏の協力があったことに感謝を述べるとともに、働きの大きな励ましであった土肥氏が召されたことによる悲しみを伝えた。Ⅱコリント5:8を引用し、「この世での務めを終えて、キリストの証人として肉体を離れることは、神に会うこと。この約束が皆様を励ましてくれるように」と語った。
広瀬氏は、土肥氏が東京キリスト教学園の顧問を務めていたこと、また同学園と理念のベクトルが一致していたことを伝えた。「私たちには、受けてきたものを実らせて、次の世代に継承していく役目がある。TCUも先生の働きの中の一つであったことを覚え、そのスピリットを担っていきたい」と話した。
呉氏は、「日本と韓国の距離を縮めてくれたのが土肥先生。私たちにしてくれたのは、信仰と共に愛を語ることで、日韓関係だけでなく、十字架の精神を基にして生きていくことが、先生を偲ぶことではないか」と話し、日韓関係が改善するために祈ってほしいと力を込めた。
近藤氏は、土肥氏が深く関わってきた日本CBMCの国家晩餐祈祷会の働きを通して、土肥氏が切望していた「超党派、超教派で祈る」「次の世代を育てる」ことが確実に実を結んでいると報告した。
弔辞の後、共催4団体代表による献花がささげられ、弟の研一氏があいさつに立った。その後、日本イエス・キリスト教団荻窪栄光教会の中島秀一牧師が祝祷をささげた。
礼拝後には、日韓基督教議員連盟の指導牧師委嘱牌授与式と、韓半島平和統一国際推進委員会の「平和のメダル」授与式が行われ、峯野氏に指導牧師委嘱牌が、峯野氏、呉氏、中島孝夫氏にそれぞれ「平和のメダル」が贈られた。