小さないのちへの祈り
最も軽視されている小さないのちを尊び、共に神の形に造られたいのちに生かされる感動が、さらに小さないのちへの愛と感動となって、いのちが輝くのです。
ひとたび、いのちが胎内に宿り、どんな苦しい状況の中でも、生む使命に徹し、その使命を果たした女性の素晴らしい輝きに、いのちの輝きと感動があります。「オギャー!」と泣く新しいいのちに接した途端に、事情があって顔も見ず、自分で抱くこともできなくても、いのちの尊さを知った、と語ってくれる女性に、いのちが輝いています。
一つのいのちを生み出すことによって、今まで生きてきたときには思いも及ばない、もっと素晴らしい世界があることを知ったと語ってくれた女性。また、たとえ実子でなくても、神から授かったこのいのちを、真にわが子としていのちを懸けて養育の使命を果たしたいですと、顔をほころばせて決意する養親。その養親のもとで、すくすく成長する小さないのちの幸せいっぱいの笑顔は、どんなことばよりも、いのちの尊さと生かされている実感と喜びがあふれています。
私たち一人ひとりの中に、いのちに対する畏敬と尊厳が芽生えて、生命倫理が確立されていくとき、いのちの創造者である神のいのちが見えてきます。神のいのちに生かされている感動が湧きあふれます。生きているのではなく、生かされていることの感動が、さらに私たちを、いのちの尊厳へと導くのです。その時、「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ」(ルカ10:27)という聖書のみことばが、私たちの中に成就するのです。創造主のかたちに造られた尊いいのちを愛する喜びがあります。愛せずにはいられない愛が生まれます。そして、いのちを尊び合い愛し合うことによって、私たちは神の愛を、神を体験するのです。
いのちの尊厳――それはいのちの触れ合いによって与えられる体験者の恵みです。いのちといのちの触れ合いによって、そこにいのちが存在するだけで、ことばでは表せない尊いいのちを発見し、体験するのです。これは恵みです。いのちの神からの祝福です。
いのちがそこに存在するだけで尊いのです。これは理論でも、哲学でも、倫理でもありません。いのちそのものが尊いのです。この地上でのいのちが、たとえ1秒であったとしてもです。
ある妊婦に胎児複合障害が発見され、中絶を医師団から勧められました。しかし妊娠初期に、激しい外部からの圧力と、自分との厳しい闘いを経た後の出産決意でした。
出産不可能と言われたいのちの誕生! 1週間と言われたいのちが、2週間、3週間と生かされ、4カ月を越し5カ月を越えました。そして139日!この地上で共に生きることが許されたのです。
お母さんは母乳を綿棒に浸して飲ませました。与えられた地上のいのちを必死に生きるその「小さないのち」が、訪れる見舞客に深いいのちの感動を与えました。いのちへの愛、そして天からのいのちの輝きを見せてくれたのです。
小さな天使の告別式に多くの大人たちが集いました。全員が泣きました。お母さんも涙の中で、赤ちゃんに、いや、神に、そして参列者全員に、「139日のいのちありがとう。139日もありがとう。139日をありがとう」と語りかけました。
いのちの尊厳、それは、いのちの長短、障害の有無、能力の差異、実子養子、そして人種や性別などに、一切関係ないのです。じっと触れ合い、慈しみ合い、そして、強いと思われる人が、弱いと思われる人を助けるのです。共存するのです。共生するのです。そのとき、いのちが輝くのです。生きていてよかった。生かされている感謝と感動がそこにあるのです。
なぜ神は、強いと思われる人を造られたのでしょうか。それは弱いと思われる人を、そうです、弱者を助けるためです。そして生きる感動と生かされている感謝を分かち合うのです。最も小さいいのちへの愛と慈しみです。
マザー・テレサは、最も貧しい人々の中に、「イエス・キリストが見える」と言いました。私も、小さな命を守る働きの中で、「小さなイエス様」が見えてきたように思います。「最も小さい者たちのひとりにしたのは、わたしにしたのです」(マタイ25:40)と言われる、主のみことばの真実といのちの体験です。このいのちに触れ、その尊厳と愛によって、私は変えられたと思います。いのちといのちの触れ合いの感動です。
神が望んでいる平和、それは、いのちの尊厳から始まります。全てのいのちが尊ばれ、愛し合い、助け合い、いのちといのちの触れあいに、温もりがあり、優しさがあり、愛があり、感動があり、喜びがあり、希望がある平和です。地に平和を。私は今、そんな日の到来を夢見ています。「生まれてきて良かった」「生きていて良かった」「幸せだった」と言える日の到来を。
神よ、いのちの創造主である神よ。来たらせてください。小さないのちからすべてのいのちが尊ばれる、主の御国を。
(終)
■ 小さないのちと私たち~あなたに逢えてありがとう~: (1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)
◇