前カンタベリー大主教のローワン・ウィリアムズ氏が、英国の俳優で作家、コメディアンとして活躍するスティーブン・フライ氏が「バカで無神経な人」だけが困難に直面しても神を疑わないと言い、神を批判したことに対して応答した。
英BBCのテレビ番組「ニュースナイト」に出演したウィリアムズ氏は、聖書にも同じような人がたくさんいると、番組司会者のエバン・デイビスに答えた。
「詩編やヨブ記に書かれているように、宗教的なコミュニティーの中にも神に抗議する声があることは興味深いことです」とウィリアムズ氏。「確かにそのような疑問を決して感じないとしたら、その人は非常に愚かで鈍感な人でしょう。しかし神秘的なのは、例えば骨のガンを患っている子どもに寄り添うというような苦しみの中でも、人はどうにかして信仰を保ち、それでも神を信頼する、という事実があるということです」と語った。
ウィリアムズ氏は、「それはとても不思議なことで、ただ単に『全部神のせいだ』と言うことはよすべきです」と言い、「私はむしろ、スティーブン・フライ氏が実際に神に会うことがあるのであれば、神からの返答を待ってほしいと思っています」と語った。
フライ氏は、1月末に放送されたアイルランドの宗教情勢を扱うテレビ番組で「まったく凶悪で、気まぐれで醜悪だ」と神を非難していた。
神に出会ったら何と言うかと尋ねられて、フライ氏は「あなたは一体どうしてこんなに惨めな世界を作ったのですか? 惨めな場所にしたのは私たちのせいでもないのに。全く極悪なやり方です。こんなに不正と痛みが一杯ある世の中を創った、気まぐれで、卑劣な心のバカな神をなぜ尊重しなければならないのですか?」と答えていた。
彼のコメントは賞賛と批判を引き起こした。現カンタベリー大主教のジャスティン・ウェルビー氏は、信教の自由において、神をけなしたフライ氏の権利は認めている。
「他人の自由に対して責任を持つことは、私の自由を守ることと同じぐらい大切なことです」と、ウェルビー大主教は今月上旬に行われた英国福音同盟(EA)の宗教自由委員会(RLC)の発足式で述べていた。
「スティーブン・フライ氏の発言は、キリスト教徒がイエス・キリストが救い主だと明言する権利と同じことで、侮辱されたキリスト教徒たちはフライ氏を中傷するべきではないのです。それもまた彼の選択の自由であり、それは創造の世界において私たちに与えられているものなのです」
フライ氏はこの発言後、BBCのラジオ番組の中で、自身の発言に対する反応に「全く驚愕した」と述べ、「私は、特定の宗教に言及しなかったし、特定の宗教を攻撃したつもりもなかった」と弁明。「この神というものに、怒りをぶつけただけです。バートランド・ラッセルのような、私よりずっと素晴らしい知能を持っている人たちが、何百年も前の古代ギリシャの時代から言ってきたことを、私は単に言っただけです」と語った。