視点
彼の視点は「何をしたら永遠のいのちを得られるか」でした。すなわち、「何をするか」という行動(行い)に視点は向いていました。日本でも多くの人々は、心の平安や徳を得るためにお遍路さんとなり、四国の寺々を廻るという行動をする人がいます。イスラム教徒は生涯に一度はメッカに行き、アラーの神に向かって祈りをすることが義務であります。それは回教徒にとってあこがれ、願いでもあると聞きました。多くの人々は「行い」に目を留めます。しかし、もし人が行いによって本当の祝福を得ることができるならば、それほど難しいことではないかもしれません。しかし、行いではないのです。
行いに目を向けた彼に対し、イエスはユダヤ教の戒めを出し「この戒めを守りなさい。あの戒めを守りなさい」と言いました。財産を全部売り貧しい人に施しなさいという教えは、ユダヤ文化を知らなければ分かりません。施しをすることは、信仰深いユダヤ教信者が行う基本的な行為です。すなわち、神を恐れ敬虔に歩む人は、いろいろな戒めを守っていることを「行い」で表すのです。貧しい人や病人を助けてあげることや、施しをすることは、文字通り神への敬虔を表す具体的な生活でした。
ですから、「律法、戒めを守っている」と言う彼に対し、イエスが「財産を貧しい人に施しなさい」と言われたのは的を得た言葉でした。しかし、彼はその具体的行動をすることができませんでした。なぜでしょうか。それは彼が持ち物、財産に心が縛られていたからです。ですから、彼の視点はずれていたのです。
不足していたもの
さらに、彼に不足していたものは何でしょうか。結局のところ、もう一つの生き方です。「物質依存の生活からの解放」です。彼が物質依存の生活から解放され、もうひとつの生き方“Quality Life”を実践することです。生きがいのある生き方、喜びある生き方、社会に役立つ生き方が求められているということです。イエスはこれをこの青年に提示されましたが、彼は受け入れることはできず悲しみながら去りました。
私たちはいかがでしょうか。私たちは、厳しいビジネス戦線の渦中に置かれています。しかしながら、さらに大きな視点で人生を考える時、その戦いは永遠に続くわけではありません。戦いは時間の経過とともに過ぎ去っていきます。そうであるならば、もう少し長期的に物事を見る必要があるのではないでしょうか。そこにもう一つの生き方があります。NPOという働きは、アメリカ社会やヨーロッパ社会でかなり浸透しています。この働きはキリスト教会から始まり、ボランティアの働きが社会の中に自然に入っています。私たちは人生を見つめ直し、正しくとらえる必要があります。
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黒田禎一郎(くろだ・ていいちろう)
1946年、台湾・台北市生まれ。70年、ドイツ・デュッセルドルフ医科大学病院留学。トリア大学精神衛生学部、ヴィーダネスト聖書学校卒業。75年、旧ソ連・東欧宣教開始。76年、ドイツ・デュッセルドルフ日本語キリスト教会初代牧師就任。81年、帰国「ミッション・宣教の声」設立。84年、グレイス外語学院設立。87年、堺インターナショナル・バイブル・チャーチ設立、ミニスター。90年、JEEQ(株式会社日欧交流研究所)所長。聖書を基盤に、欧州情報・世界 情報、企業講演等。98年、インターナショナル・バイブル・チャーチ(大阪北浜)設立、活動開始。01年、韓日ワールドカップ宣教GOOL2002親善大使として活躍。著書に『世界の日時計』(Ⅰ~Ⅲ)、『無から有を生み出す神』『新しい人生』『愛される弟子』『神のマスタープランの行くへ』『ヒズブレッシング』、韓国語版『聖書と21世紀の秘密』、中国語版『神の聖書的ご計画』他訳書あり。