柔和な人とは、不正、悪と正反対の立場にある人です
現在の日本社会で大きなネックは、談合問題です。これまで日本社会において、談合はビジネスの常識でした。談合がなければ物事は決まらないというのが、日本社会の一般常識でした。
しかし今、談合社会構造は崩れつつあります。それはなぜかといえば、社会のグローバル化に原因があると思われます。すなわち国際化です。談合が明らかにされる大多数のケースは、内部告発です。60年前の日本社会では談合は当たり前、常識でした。そして誰もが口を閉ざしていたのが、今は内部告発で、「訴える」という社会に日本が大きく様変わりしつつあるのです。訴える、告発するということは、欧米社会のスタンダードが日本に入りつつあることを示しています。これがグローバリゼーションです。日本はもう国際社会の一員で、しかも重要な位置を占めています。ですから、60年前の談合マインドと社会は変わり、ビジネスの世界は大きく変わってきているということです。
今から約30年前、私がドイツで生活しておりました時、ある日本の大手楽器メーカーに勤める方がいました。彼は若くしてビジネスの才能を発揮され、海外につぎつぎ支店を開設された方です。ある時、彼が「もうドイツでは日本のような接待はほとんどないのです」と言われました。まして談合では話が進みません。もちろんドイツ社会は日本と同一視することはできないでしょう。しかし、ビジネスは人と人、心と心のつながりです。人間関係において、誠実、正直こそビジネスパートナーとして重要です。
毎週のように飛行機で海外に出張していた彼のかばんの中には、常に本が入っていました。私は興味があったので質問しました。「どんな本をいつも読んでおられるのですか?」「私は浅く広く勉強します。あらゆる分野の書物を読みますが、あまり掘り下げていません」「なぜですか?」「それは自分のクライアントがどんなことに趣味と関心を持っているか分からないからです。クライアントと話す時に、音楽に興味がある人、芸術に興味がある人、株に興味がある人、あるいはお金だけに興味がある人といろいろな人がいます。私は誰とでも話せるように、話の切り口を見つけることができるように、いろいろな本を読んでいます」
彼は「欧米スタンダードは、遅かれ早かれ日本にも来るでしょう」と言っていました。これは止められない国際化です。インターネットの時流を止められないのと似ています。たとえば隣の中国を見てください。中国は政治的には共産主義ですが、上海、北京を見るならば、東京、大阪以上の発展都市です。あの急速な伸びは、ビジネスで民主主義思想を導入しているところにありましょう。一番大きな動きは、止められないインターネットによる情報社会です。ですから、農村や地方との格差社会がますます大きくなっています。
覚えていただきたいのは、日本社会は確実に国際化社会へ移行しているということです。そしてこの国際化は止めることができません。
今から約2千年前、キリストは人の生き方を教えました。「柔和な人は幸いです」。仕事をする人の生き方においても、実は「柔和な人」であるかどうかが問われます。ある人が言いました。「作業と仕事は違う。作業は人に言われ、人に命じられてするのが作業だ。しかし、仕事は自分が工夫し、自分が考えて初めて仕事となる。すなわち頭を使いなさいということである」。あなたに与えられた才能、あなたに与えられた経験、あなたに与えられた良い環境、いろいろなものを良い面で生かし、あなたにしかできない働きがあるのです。それを行うのが、仕事だということです。ですから、仕事をする人の生き方も、聖書は私たちに教えてくれています。
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黒田禎一郎(くろだ・ていいちろう)
1946年、台湾・台北市生まれ。70年、ドイツ・デュッセルドルフ医科大学病院留学。トリア大学精神衛生学部、ヴィーダネスト聖書学校卒業。75年、旧ソ連・東欧宣教開始。76年、ドイツ・デュッセルドルフ日本語キリスト教会初代牧師就任。81年、帰国「ミッション・宣教の声」設立。84年、グレイス外語学院設立。87年、堺インターナショナル・バイブル・チャーチ設立、ミニスター。90年、JEEQ(株式会社日欧交流研究所)所長。聖書を基盤に、欧州情報・世界 情報、企業講演等。98年、インターナショナル・バイブル・チャーチ(大阪北浜)設立、活動開始。01年、韓日ワールドカップ宣教GOOL2002親善大使として活躍。著書に『世界の日時計』(Ⅰ~Ⅲ)、『無から有を生み出す神』『新しい人生』『愛される弟子』『神のマスタープランの行くへ』『ヒズブレッシング』、韓国語版『聖書と21世紀の秘密』、中国語版『神の聖書的ご計画』他訳書あり。