アドベントを目前に控える26日、東京オペラシティビル近江楽堂(東京都新宿区)で、「グローリー・ハレルヤ・クリスマスコンサート」が開催された。出演したアーティストは、シンガー・ソングライターの久米小百合と川瀬葉月、キーボード奏者の久米大作、米ロサンゼルスの教会を中心に活動するクワイア「NCM2 CHOIR」。それぞれがコラボレーションしながらステージを披露した。
コンサートの題名と同じ、「グローリー ハレルヤ」のフレーズが印象的なゴスペルソング「Nobody Knows(誰も知らない私の悩み)」をアカペラで歌い上げた小百合さん。一足早くクリスマスを感じてほしいと、続いて「グリーンスリーブス」を英語と日本語で静かに歌った。伴奏を担当した大作さんとの夫婦共演だったが、合わせていないはずの衣装が赤のカラーで揃うという、クリスマスを先取りするような温かいハプニングを見せた。
東北の活動を支援する「東北応援団 LOVE EAST」や、日雇労働者サポートをする「ほしのいえ」に協力している小百合さん。息子が初めて飛行機に乗ったときに口にした数々の言葉を元に作られたオリジナル曲「天使のパン」で、「地図帳みたいに いろんな国が いろんな色で塗り分けられちゃいない」と歌う。小百合さん自身も幼い少年と同じ視点に立って、神の造られたこの世界を見、働きを成しているのだろうと感じさせられた。
小百合さんのアルバムでもコーラスとして参加していたNCM2 CHOIRは、現在、「NCM2 CHOIR 日本ミッション・ツアー」の真っ最中。今回のツアーメンバーは、マダム(Yuri Matsuo)、ジュンソク(Junseok Lee)、加藤ミキ・ジョージ(Miki Kato Giorge)、隊長(Yoshio J. Maki)の4人。
NCM2 CHOIRも西岡恭蔵作曲の「グローリー ハレルヤ」に始まり、「ジーザス・ラブス・ミー」「アメイジング・グレイス」「世界に告げよ」を見事なハーモーニーで披露。続いての曲「よき力に守られて」は、この時期、クリスマスから新年にかけてドイツで歌われる定番の讃美歌だ。作詞者は、ナチス政権下でヒトラー暗殺計画に加わった牧師、ディートリッヒ・ボンヘッファー。絞首刑になった彼が、獄中から婚約者へ送った手紙に書かれた平安と希望に溢れた詩が、讃美歌となったものだ。
今回のコンサートの舞台、近江楽堂には音響設備が一切なく、生の歌声が高い天井に響くという贅沢なコンサートだった。「マイクなしで歌ったのは中学校の文化祭以来で、少し不安というか新鮮な気持ちです」と小百合さん。観客からは「さゆりちゃん!」「大ちゃん!」と声が掛かり、この日誕生日のミキさんへのバースデーソングが一同で歌われるなど、会場が一つとなってひと時を楽しんだ。
ステージの途中で小百合さんが朗読した『マザー・テレサ 愛のことば』の絵本の中に、こんなフレーズがあった。「あなたは この世に のぞまれて 生まれてきた たいせつな人」。このメッセージは、神から人への普遍的な愛のメッセージだ。しかし、それと同時にイエス・キリストこそが全人類に望まれた人、必要とされる人であることを、クリスマスのこの時期には思い起こしたい。そして、そんな最も大切な人の誕生を心から祝う気持ちを持ってアドベントを過ごそうと思わされつつ、アットホームで温かいコンサートは幕を閉じた。