感謝をもって
ルカの福音書17章11~19節
[1]序
今回は、ルカの福音書17章11節から19節の記事を通して、「感謝」について教えられたいのです。
まず1節に見る背景に注意します。「エルサレムに上られる途中」とエルサレムについて強調しています。エルサレム、エルサレムにおける十字架にいつも目を向けています(25節)。主イエスの十字架、「神の国」(21節)、「人の子」主イエスの再び来り給う日(24節)と神の恵みの御業について語られています。
また「サマリヤとガリラヤの境を通られた」と、サマリヤについて言及。サマリヤやサマリヤ人(16節)に、ルカは注意を払っています(9章52節以下、10章30節以下)。
[2]「イエスの足もとにひれ伏して感謝」(11~16節)
(1)いやしの背景
①病める人々が共に生活。
②主イエスのあわれみを求める。
③律法と一致する、主イエスの命令(レビ14章2節)と十人の応答
「彼らは行く途中できよめられた」(14節)。主イエスのことばに従うことを通して、主イエスと離れている所でのいやし。主イエスのことばを信じ、従うことが中心。
(2)いやされた時
①「そのうちのひとりは、自分のいやされたことがわかると」(15節)
主イエスの質問、「十人きよめられたのではないか。九人はどこにいるのか」(17節)。
②神をほめたたえ、感謝
「感謝」。いやしと共に、いやし以上にいやしてくださったお方に心を向けている、いやされたサマリヤ人の姿。
いやしは、このサマリヤ人を主イエスに結びつけるためのもの。いやしのための手段として、主イエスの助けを利用するのではない。
感謝と言っても、18章11節の場合を注意。どなたに何を感謝するのかが問題。
[3]「あなたの信仰が、あなたを直したのです」(19節)
主イエスのことば、14節、「イエスはこれを見て言われた。『行きなさい。そして自分を祭司に見せなさい。』」と19節、「それからその人に言われた。「立ち上がって、行きなさい。あなたの信仰が、あなたを直したのです」」。主イエスのことばに従う。
①百人隊長の場合、マタイ8章13節。
②カナン人の女の場合、マタイ15章28節。
[4]結び
(1)神の恵みの御業に対する「感謝」と切り離されない信仰。その信仰を抱く者に対する、19節に見る主イエスの宣言。
(2)「立ち上がって、行き」、この主イエスのことばに従う感謝の表れとしての生活。
宮村武夫(みやむら・たけお)
1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。現在、日本センド派遣会総主事。
主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、他。