2018年発行の日本語訳聖書「聖書協会共同訳」が10日、ローマ教皇フランシスコに献呈された。日本カトリック司教団が8日から13日まで行ったバチカン定期訪問(アドリミナ)に併せたもので、発行元の日本聖書協会と日本カトリック司教協議会が共同で行った。
教皇は19年に来日しているが、聖書協会共同訳が献呈されるのはこれが初めて。献呈は、現地時間10日午前9時(日本時間同午後4時)からバチカンのサンピエトロ広場で開催された教皇の一般謁見の中で行われた。日本カトリック司教協議会事務局長で日本聖書協会評議員の川口薫神父と、日本聖書協会総主事の具志堅聖牧師が、それぞれ日本カトリック司教協議会会長の菊地功大主教と、日本聖書協会理事長の石田学牧師の代理として手渡した。
献呈されたのは、A4サイズの特装版講壇用聖書。日本聖書協会がオランダの製本職人ヴィッツェ・フォプマ氏に特注した。通常の講壇用聖書は黒色の革表紙だが、ミョウバンでなめした白色の豚革による革表紙を使用するなどしている。5本の背バンドを施した古典的な装丁で、洗練されたフランス製本の伝統にのっとった造りになっており、教皇の人柄をイメージしてデザインしたという。また、運搬時に損傷することがないよう、フォプマ氏が自らオランダからバチカンまで運んだという。
教皇には、聖書本体のほか、イタリア語訳と日本語訳を添付した献呈状(英語)と、献呈した聖書の製作とバチカンまでの運搬の様子を写真で記録した冊子も手渡した。
献呈状では、「聖書の共同訳は日本におけるエキュメニズムの最大の成果であり里程標です。共同訳は共通の福音宣教の基盤となるものです」と強調。日本カトリック司教協議会はまだ新共同訳に代えて聖書協会共同訳を典礼で使用することを決議していないものの、「聖書協会共同訳が日本におけるエキュメニズムのもう一つの重要な成果であることは言うまでもありません」としている。
聖書協会共同訳は、カトリックとプロテスタントによる共同訳としては、「新共同訳」以来31年ぶり、2番目の日本語訳の聖書。翻訳には、翻訳者や編集委員、外部モニター、検討委員を合わせて148人が関わり、約7年を要した。今回の献呈は、発行5周年も記念して行われた。
なお、新共同訳は、日本聖書協会前総主事の渡部信牧師が、聖書協会世界連盟の関係者らと共に17年にバチカンを訪問した際、教皇に献呈している(関連記事:日本聖書協会の渡部信総主事ら、ローマ教皇フランシスコと謁見)。
カトリックの教区司教がバチカンを定期訪問するアドリミナは、「使徒たちの墓所の訪問」を意味するラテン語の略称。司教らはこの訪問で、聖ペトロと聖パウロの墓を巡礼するとともに、教皇に謁見し、担当する教区の状況について報告書を提出する。通常は5年に1度だが、今回は新型コロナウイルスの影響もあり2015年以来9年ぶりとなった。訪問団には、日本の全15教区から17人の司教が参加した。
■ 教皇フランシスコ献呈用特装版講壇用聖書のメイキング映像