聖書の日本語訳としては最新となる「聖書協会共同訳」の点字聖書の奉献式が6日、日本基督教団銀座教会(東京都中央区)で行われた。奉献式には、出版元の日本聖書協会や日本盲人キリスト教伝道協議会の関係者ら約50人が出席し、オンラインでもライブ配信された。
聖書協会共同訳は、通常の墨字聖書が2018年12月に出版された。日本聖書協会はその約1年前から、点字聖書の翻訳・製作を依頼する東京点字出版所と協議を開始。墨字聖書が出版されるとすぐに点字への翻訳作業が始まり、19年5月には、創世記と出エジプト記が最初の分冊として発行された。
同年8月には、マタイによる福音書が新約最初の分冊として発行され、その後毎月数冊ずつ、旧約・新約の分冊を並行して発行。20年5月には、旧約26冊、新約8冊、旧約聖書続編6冊の計40冊が完成した。その後、利用者からの要望に応える形で、昨年10月には用語解説も発行。これにより、聖書協会共同訳の点字聖書事業は大きな区切りを迎えることになった。
奉献式では、日本聖書協会の菊地功副理事長が開会祈祷をささげ、具志堅聖総主事が、点字聖書事業に関わる一連の過程を報告。聖書本文の点字翻訳は東京点字出版所が担ったものの、表紙や本扉などについては、出版部の職員らが点字を学びながら内容を決めていったことなどを話した。
東京点字出版所は1926年創業の点字図書製作の老舗で、日本聖書協会発行の聖書では、口語訳、新共同訳の点字聖書の製作も手がけている。奉献式であいさつをした肥後正幸理事長は、点字図書の製作工程はほとんどが手作業で、非常に時間がかかるものであることを説明。特に聖書は、何度開いても本の背が剥がれることのないよう、通常は製本機を使うところも、はけを使って手作業でのり付けするなど、より手の込んだ工程で製作していることを話した。
日本盲人キリスト教伝道協議会の田中文宏議長は祝辞で、「主イエス・キリストを賜りました神様に心から感謝をするとともに、ハレルヤとその御名を賛美したい」と述べ、聖書協会共同訳の点字聖書が完成したことへの感謝を表明。「障がいの有無にかかわらず、全ての人にキリストの福音を宣(の)べ伝えることが、復活の主のご命令です。この点字聖書の奉献は、主のご命令に従うことであり、そして神様のご栄光を表すことだと信じています」と話した。
聖書朗読は、日本基督教団新泉教会会員で視覚障がい者の西山春子さんが、ルカによる福音書4章16~21節を、点字聖書を用いて読み上げた。その後、日本聖書協会の石田学理事長が、イエス・キリストが故郷ナザレで最初の宣教を行った場面から、「福音が全ての人々に届くために」と題して説教。点字聖書を出版する意義について話した。
石田氏は、「いつの時代、どの世界であっても、福音が届かない人、神の言葉から阻害されている人々がいる」と言い、点字聖書を出版することは、「全ての人に福音が届くために力を尽くすことの象徴であり、証し」だと強調。また、イエス・キリストに従うことの具体的な表れでもあるとし、「主なる神が、この点字聖書を祝福し、生かして用いてくださり、全ての人に福音が届くための宣教の働きの一つの証しとしてくださるよう、心から願い祈ります」と述べた。
点字聖書は、通常の墨字聖書に比べ、サイズが大きく、厚さがあり、冊数も多い。サイズが大きいのは、指で触って分かるよう、またページのどの箇所を読んでいるのか分かるようにするためで、厚さがあるのは、凹凸のある点字をつぶさないようにするためだ。また、冊数が多いのは、1ページに収められる文字数、1冊にとじられるページ数に限界があるためだ。
聖書協会共同訳の場合、旧約聖書続編を含めると、聖書全巻は1セットで全40冊となり、製作費は1セット当たり7万円近くになる。そのため日本聖書協会では、一般から献金を募り製作費に補填することで、1冊100円、1セット40冊で4千円と、通常の墨字聖書とほぼ同じ価格で販売している。
聖書協会共同訳の点字聖書については、点字原盤と初版100セット(計4千冊)の製作に必要な1千万円を目標とする募金キャンペーン「SIチャレンジ」を行っている。この4年余りで既に約920万円が集まっており、目標達成が視野に入っている状況だ。
寄付は、クレジットカード支払い、郵便振替、銀行振込で受け付けている。クレジットカード支払いの場合、毎月定額(500円・1000円)で寄付を行うことも可能。詳細は日本聖書協会のホームページを。