1993年に創立され、日本のろう者クリスチャンに関する情報収集と研究・聖書の手話翻訳作業などを行っている「日本ろう福音協会」が、「日本手話訳聖書」アプリを完成させ、先月から無料で配布を行っている。
視覚的な情報を得ることができるろう者は、聖書の文字を理解できるのではないか、なぜ手話訳聖書が必要なのか、と思ってしまいがちだが、実際はそうではない。音声と書記から成る日本語や英語などの言語は、音を文字で表現するため、音を聴くことのできないろう者にとって、文字を理解することはとても難しいことなのだ。
日本人のろう者であっても、「日本語」は第二言語でしかなく、ろう者にとっての第一言語は「日本手話」。日本手話は、日本語とは違う文法構造を持った独自の言語であるため、日本語訳聖書とは異なる日本手話訳聖書が必要となる。
日本手話訳聖書は、旧約聖書が、創世記・出エジプト記1〜13章・ルツ記・エステル記・ヨナ書の約5巻、新約聖書が、マタイによる福音書・マルコによる福音書・ヨハネによる福音書・使徒言行録・ガラテヤの信徒への手紙・フィリピの信徒への手紙・コロサイの信徒への手紙・テサロニケの信徒への手紙一・テサロニケの信徒への手紙二・フィレモンへの手紙・ヤコブの手紙の約11巻がすでに翻訳されている。
翻訳作業は、聖書の背景・原語などのさまざまな資料をもとにした事前研究、頭に浮かんだ情景の手話化、原語(ギリシャ語・ヘブライ語)対照チェック、手話の正確さチェックなど、多くの段階を経て進められていく。人材不足により、当初の予定の20%ほどしか翻訳が達成していない現状にあるが、翻訳者育成と並行しつつ翻訳作業が進められており、2033年までに新旧約聖書66巻の翻訳完成を目指している。
今回完成したアプリでは、既に翻訳が完成している手話訳聖書の各巻を読むことができる。今までも、日本ろう福音協会のホームページやユーチューブで配信され、DVD配布も行われていたが、アプリになったことで、いつでもどこでも、ネットに接続していない環境でも問題なく利用することができるようになった。
ろう者も開発に携わっているため、ただ動画を再生するだけでなく、スピード調整、ブックマーク、ビデオノート(手話でメモを保存する機能)、履歴など、便利な機能が充実。同時に、新共同訳聖書の本文も表示されるため、日本手話が第一言語のろう者クリスチャン、日本語が第一言語のクリスチャンどちらにとっても、みことばに触れやすいアプリとなっている。
日本手話訳聖書、アプリの詳細・問い合わせは、日本ろう福音協会(FAX:042・439・4789、ホームページ)まで。
アプリは、「手話訳聖書」で検索し、Android 版は Google Play から、iOS 版は、AppStore から無料でダウンロードできる。