日本聖書協会(東京都中央区)の渡部信総主事(69)は5日、聖書協会世界連盟(UBS)の理事の1人として、UBS教会関係委員会の委員ら7人と共にバチカン(ローマ教皇庁)を訪問し、教皇フランシスコ(80)と謁見した。
世界146の聖書協会が加盟するUSBは、聖書の共同翻訳やその他の出版分野において、カトリックや正教会、プロテスタントのあらゆる教派と協力することを目指しており、今回の謁見はその一環として実現した。
教皇は謁見で次のように語った。「私たちは共に御言葉を述べ伝えましょう。共に祈りましょう。御心がこの地において成るように、主が私たちの中で成し遂げられると言われていることを共に実現しましょう」。そして、UBSに対してさらに緊密な協力を呼び掛けた。
謁見後、渡部氏は、カトリック教会との協力関係をより深めていきたいとし、日本語訳聖書「新共同訳」を教皇に献呈。「日本のクリスチャンは、教皇が日本に訪れることを待ち望んでいます」と伝えると、教皇は「行きますよ、問題はいつ行くかです」と笑顔で応じた。
聖書翻訳を進めることで信徒が聖書を読むことができる重要性にも光を当てた第2バチカン公会議(1962~65年)後の68年、プロテスタントとカトリックが礼拝やミサにおいて同じ聖書を使えるよう、カトリックとUBSは聖書翻訳の「標準原則」をまとめた。それ以降、世界各国でプロテスタントとカトリック共同の翻訳が始まった。聖書がさらに家庭で読まれることを教皇は奨励しており、聖書の共同翻訳事業は世界各国で推し進められている。日本聖書協会もまさに今、来年12月発刊予定の「聖書協会共同訳」の最終作業の最中だ。
聖書協会世界連盟(United Bible Societies=UBS)は1946年、戦後の混乱の中にある欧州やアジアの人々にいち早く聖書を届けようと、13の聖書協会が協力したことで始まった。世界的に貧富や教勢の差がある中で、聖書普及や翻訳、製作などを支援し合う働きをしている。日本にも当時、700万冊の新約聖書が贈られた。
各教派との協力ではこれまでに、カトリック聖書連盟(CBF)や世界福音同盟(WEA)、コプト正教会、ギリシャ、ロシアの両正教会と会合を開いており、来年3月には世界教会協議会(WCC)、9月にはアルメニア使徒教会やペンテコステ派とも会合を予定している。
日本聖書協会は1937年に設立され、多くの教会やキリスト教主義学校などで使われる聖書(口語訳、新共同訳など)を出版、頒布してきた。渡部氏は日本バプテスト連盟の牧師(現在、常盤台バプテスト教会協力牧師)で、99年から日本聖書協会の総主事に就任、2014年から、24人の理事の1人としてUBSの働きに関わっている。