迫害下の教会を支援する英キリスト教団体「リリース・インターナショナル」(RI)は、ロシアの占領下にあるウクライナの一部地域で、キリスト教指導者らが「殺害され、拷問され、行方不明」になっているとする一方、希望の兆しもあると報告している。
RIのポール・ロビンソン最高責任者(CEO)は21日付の報告(英語)で、「プーチン大統領が5期目の任期を開始するに当たり、キリスト教会に対する圧力が高まっていると現地のパートナー教会は話しています」と述べている。
RIのパートナー教会によると、非モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会(OCU)に所属していたステパン・ポドルチャク司祭(59)は2月、ロシアの占領下にあるウクライナ南部ヘルソン州カランチャクの路上で遺体となって発見された。ポドルチャク司祭の体には拷問の痕があったという。
ポドルチャク司祭が遺体となって発見されたのは、ロシア内務省の過激主義対策センターの職員と思しき人物に拘束され、連行された2日後だった。
RIのパートナー団体である「フォーラム18」によると、ポドルチャク司祭は被害に遭う前、OCUを離脱して、モスクワ総主教庁管轄下の教会に加わるよう圧力を受け、抵抗していたという。
RIは、ロシアの占領下では「プーチン大統領を支持するロシア正教会以外の宗派は、過激派とみなされることが増えています」としている。
被害に遭ったのはポドルチャク司祭だけではない。ペンテコステ派の教会で執事を務めていたアナトリー・プロコプチュクさん(52)は22年11月、息子のオレクサンドルさん(19)と共にへルソン州で拉致され、遺体で発見された。2人は体を切断された上、銃で撃たれていたという(関連記事:ウクライナのペンテコステ派教会の執事と19歳の息子、ロシア兵に拷問され殺される)。
フォーラム18によると、「ロシア占領軍は侵攻以来、他のウクライナの宗教指導者らも拉致したり、拷問したり、殺害したりしている」という。
RIによると、ロシア国籍の受け入れを拒否して行方不明になったり、ロシアに強制送還されたりするケースもあるという。
しかし、ヘルソン州では、福音に飢え渇く人々で教会が満ちあふれるなど、希望の兆しもある。
「恐怖、不安、抑圧の中で、福音への渇望は高まっています。教会があふれんばかりに満員になり、多くの人がキリストに人生をささげているという報告を聞いています」とロビンソン氏は言う。
また、RIのパートナーは「人々は神の言葉に群がり、キリストを信じています」と話す。
RIは、ウクライナ国内にとどまるクリスチャンと、他の場所に安全を求めて避難しているクリスチャンの双方を支援するために活動している。
「私たちは、迫害下にあるクリスチャンと活動する中で、抑圧の故に自分たちの人生の意味を見直し、深く考えるようになる人々を幾度となく見てきました」とロビンソン氏。「全てが取り除かれたとき、人々は本当に重要な問いかけに直面します。それは『なぜ自分は存在しているのだろうか。私は何のために生きているのだろうか』というものです」と話す。
「迫害は恐ろしいものですが、神は希望と(人生の)意味を回復させるために力強く臨在しておられます。パートナー教会は、火によって精錬されるウクライナの教会に仕えるために働いています。福音が宣(の)べ伝えられる所で、教会は成長するのです」