ウクライナ当局は、ロシアと同調的な関係にあるとされる正教会の聖職者7人に制裁を科すよう命じた。
ロイター通信(英語)によると、ウクライナ国家安全保障・国防会議は、ロシアと同調的な関係にあるとされる正教会の聖職者7人について、資産を差し押さえ、特定の経済活動や法的活動、また渡航を禁止した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は11日、この措置を発表した際、聖職者がロシアに協力するのを防ぐためだと主張。「われわれは、ウクライナ社会を苦しめ得る侵略国家が引ける糸はないことを確かなものとするため、あらゆることをしている」と述べた。
今回の措置は、ロシアに同調的だとゼレンスキー氏が主張するウクライナ国内の一部の正教会に対し、ウクライナ当局が行っている幅広い取り組みの一端。
具体的には、ウクライナ当局は、ロシアから独立している非モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会(OCU)ではなく、ロシア正教会との関係が深いとされるモスクワ総主教庁系のウクライナ正教会(UOC)を問題視している。
ロシア正教会のモスクワ総主教キリルはこれまで、同国のウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵攻を支持しているとされる。
UOCは5月、侵略を巡りロシアとの関係を公に断絶したが、教会内で親ロシア派の文書が見つかったとして、ウクライナ保安庁の家宅捜索の対象となっている。また30人以上の司祭が、ロシアに同調しているとして停職処分となり、捜査を受けている。
ロイター通信は今月初め、ウクライナ当局が、モスクワ総主教庁の指示を受けている可能性があると考えられる教会での礼拝を禁止することを検討していると報じた。ゼレンスキー氏は、親ロシア派の影響力が、ロシア軍と戦うウクライナの「人々を操り、ウクライナを内部から弱めようとしている」と主張し、これを正当化した。
一方、ウクライナ当局のこうした措置について、信教の自由を侵害する行為であり、西側諸国はそれを無視しているとして、懸念を表明する人もいる。
米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」のコラムニストであるヘディ・ミラマディ氏は、「ゼレンスキー大統領は信教の自由を抑圧するのではなく守るべき」(英語)と題したコラムで、次のように主張している。
「ゼレンスキー氏は、UOCがモスクワから正式に分離したにもかかわらず、その宗教活動を禁止したことで、苦境にある何百万人ものウクライナ人の精神的実践を事実上制限しています。彼らは自分たちの教会に通うことも、司祭に祈りを求めることも、一生涯を通じて安らぎを求めてきた教会コミュニティーと付き合うことも、許されていないのです」
「ウクライナの対ロシア戦争は民主主義のための戦いだという主張がなされていますが、修道院に軍隊を送り込むことは自由の促進にはなりません。ウクライナの盟友によるこの最新の動きは、政治的な立場にかかわらず、キリスト教徒による大きな反発の根拠となるはずです」