バチカン(ローマ教皇庁)は26日、中国が司教任命に関する暫定合意に違反したとして、「驚きと遺憾」を表明する声明を発表した。
声明(イタリア語)によると、中国東部・江西省の省都である南昌市で24日午後、余江教区(同省)の彭衛照(ポン・ウェイチョウ)司教(56)を、「江西教区」の補佐司教とする「任命式」が行われた。
カトリック系のアジア・ニュース(英語)によると、彭司教は、バチカンと中国が2018年に暫定合意を結ぶ4年前の14年、ローマ教皇フランシスコの承認の下、密かに司教に叙階された。叙階後は6カ月にわたって拘束された経験のある中国政府非公認の「地下司教」だった。
一方、「江西教区」は、同省内の5つの教区を、中国政府が1980年代にバチカンの承認なしに統合した教区。そのため、彭司教は今回、バチカンの承認なく、「地下司教」から「公認司教」に転身したことになる。
声明は、「江西教区」がバチカンの認める教区ではないことを指摘。今回の任命は、「対話の精神と、2018年9月22日の『司教任命に関する暫定合意』に規定されている内容に従って行われたものではない」と批判した。
また、彭司教に対しては、地元当局が長らく強い圧力を加えていたと指摘。その上で、「同様の出来事が繰り返されないことを望み、中国当局からの適切な連絡を待つとともに、共通の関心事項の全てにおいて尊重し合う対話を継続する意思を再確認する」とした。
アジア・ニュースによると、任命式は「江西教区」の李蘇光(リー・スグアン)司教(58)の司式で行われ、約200人が参列した。李司教は、バチカンが認めていない「中国カトリック司教協議会」の副会長などを務めている。
彭司教は、北京の国立神学校で学び、1989年に司祭叙階。中国政府公認のカトリック教会へ入会することを拒否したため、何度も拘束され投獄された曽景牧(ツェン・チンムー)司教(1920~2016)の後任として、2014年に余江教区の司教に叙階された。
バチカンと中国は、司教の任命権を巡って1951年から断交しているが、2018年に暫定合意を締結。合意の有効期間は2年間で、これまで20年と22年の2回にわたって延長してきた。特に直近の延長は、先月22日に発表されたばかりだった。
暫定合意の内容は非公表だが、中国側が司教の候補を選出し、教皇が任命するものと考えられている。