バチカン(ローマ教皇庁)は22日、中国との司教任命に関する暫定合意について、2年間延長すると公式サイト(英語)で発表した。
バチカンと中国は、司教任命権を巡って1951年に断交。以降、中国政府が任命した司教による政府公認のカトリック教会と、教皇が任命した司教による政府非公認のカトリック教会が存在してきた。
そうした状況の中、両国は2018年に暫定合意を締結。内容は非公表だが、中国側が司教の候補を選出し、教皇が任命するものと考えられている。
暫定合意の当初の有効期間は2年間で、20年にも延長されている(関連記事:バチカン・中国、司教任命めぐる暫定合意を2年延長 「有益」と判断)。今回は2回目の延長となる。
バチカンは発表で、「カトリック教会の使命と中国国民の利益を促進する観点から、本合意の生産的な履行と両国関係のさらなる発展のため、中国との敬意ある建設的な対話を継続していく」とした。
暫定合意締結後、4年間の成果
バチカン国務長官(外相)のピエトロ・パロリン枢機卿は、バチカン・ニュースとのインタビュー(英語)で、暫定合意締結後の4年間の成果として以下の3点を挙げた。
- 中国の司教全員が教皇と完全な交わりを持つようになり、「非公認」の司教叙階がなくなった。
- 暫定合意の手続きに従って司教6人が叙階された。
- 「非公認」の司教6人が公認化された。
その上で、「これらは小さな成果に見えるかもしれませんが、信仰の目で歴史を見る者にとっては、過去の出来事が教会共同体に与えた傷を徐々に癒やしていくための重要な一歩なのです」と語った。
また、暫定合意における司教任命の手続きについては、「教皇が最終的かつ決定的な決定権を持つ」ものだと語った。
暫定合意を2回にわたって延長した理由については、「このような困難で細心の注意を要する状況においては、結果の有効性を検証し、改善の可能性を見極めるために十分な時間が必要です」と説明。また、新型コロナウイルスの感染拡大は、「暫定合意の履行を綿密に監視・評価する代表団間の会合に、目に見えた障害を生じさせました」と述べた。
和解が進む教区、実りある対話ができない教区
4年間に叙階された司教が6人にとどまったことについて、「少な過ぎないか」という記者からの質問には、「これらは最初のものであり、他の手続きも進行中です」と説明。「同時に私たちは、司教が空位の教区がまだ数多くあり、また非常に高齢の司教がいる教区も存在することを認識しています」と述べた。
その一方で、「教皇が強く望まれる和解への道筋がリズムを刻んでいる教区」もあるが、「あらゆる努力と善意にもかかわらず、地元当局との実りある対話が存在しない教区」もあると認めた。
その上で、暫定合意の究極の目標は、「中国のカトリック信者が、キリスト者としての人生を穏やかかつ自由に送る機会を促進する」ことにあると語った。
台湾が声明、中国の信教の自由の問題指摘
バチカンは、欧州で台湾と外交関係を持つ唯一の国。台湾は、暫定合意を通じてバチカンと中国が歩み寄ることを警戒しているとされ、台湾外交部(外務省)は同日、声明(中国語)を発表した。
声明は、バチカンがこれまで、暫定合意の目的について、中国のカトリック信者が通常の信仰生活を送る権利を促進することにあるとし、外交的・政治的問題に触れるものではないことを何度も公言してきたと説明。暫定合意が、中国で拡大する信教の自由の問題の改善に役立つことを望むと表明した。
その上で、中国では近年、カトリック教会を含むキリスト教会に対する迫害が激化しており、信教の自由と人権の状況が悪化の一途をたどっていると指摘。バチカンとは人道分野で引き続き協力を進め、信教の自由の促進に貢献していくとした。