中国当局が、共産党政府公認のプロテスタント系組織である「三自愛国教会」への参加を拒否している教会に対する弾圧を強めている。陝西(せんせい)省西安市では最近、約30年の歴史がある「家の教会」(政府非公認教会)が閉鎖された。中国の人権状況を監視するニュースサイト「ビター・ウィンター」(英語)が伝えた。
閉鎖されたのは、当局が違法な献金を集めている「邪教(カルト)」だとし、これまでも弾圧の標的にしてきた西安豊盛教会。しかし、ビター・ウィンターによると、当局は今回、西安豊盛教会を「邪教」としてではなく「違法な社会組織」として閉鎖したという。
中国共産党は昨年12月、2016年以来となる「全国宗教工作会議」を開催。習近平国家主席はその席で、「非中国的」で「違法」な宗教団体に対しより積極的な取り締まりを行うよう呼びかけた。ビター・ウィンターの元には今年に入り、中国各地のキリスト教信者から、「家の教会」を取り巻く状況が悪化しているとする報告が続いているという。
「習近平国家主席は、全てのプロテスタント信者を、政府が管理する三自愛国教会に参加させるか、さもなければ逮捕し、邪教や違法な宗教団体として教会を閉鎖するという計画を、無慈悲に実行しているのです」
西安市民政局が西安豊盛教会の閉鎖を正式に発表したのは19日。ビター・ウィンターは、教会活動を停止しなければ、牧師や信者らは逮捕されることになるとし、既に同教会の廉長年(リェン・チャンニアン)主任牧師と息子の廉旭亮(リェン・シュリアン)牧師は、「指定場所における住居監視」の下にあるとしている。
この活動禁止令は、「家の教会」のネットワーク組織である「中国福音協会」に対しても出された。
米キリスト教系人権団体「チャイナエイド」(英語)によると、西安豊盛教会の閉鎖が発表される前の17日、西安市公安局は、廉長年牧師と妻の郭九菊(グォ・ジウチ)さん、廉旭亮牧師と妻の張俊(チョウ・ジュン)さんと9歳の息子、同教会の女性スタッフ1人と女性伝道師1人を拘束。それぞれの自宅を家宅捜索し、管轄の警察署に連行して取り調べを行った。いずれも同日夜には釈放されたが、翌18日には当局者が再び来て、9歳の子どもを除く先の大人6人に手錠をかけ、写真を撮影しに西安豊盛教会まで連行。写真撮影後、西安市の民政局と宗教局は、違法集会、違法募金、違法会場登録の罪状を提示したという。
郭九菊さんは、廉旭亮牧師の額に殴られた大きなあざがあったと話している。「彼の目は充血し、目尻には乾いた血が付いていました。マスクにも血の筋がありました。腕や手にはあざがあり、腫れていました。これらのいわゆる法執行官たちによる『法執行』には、間違いなく身体的虐待があります」
チャイナエイドによると、西安市公安局は廉長年牧師と廉旭亮牧師については、「詐欺」の容疑者として、「指定場所における住居監視通知」を出し、自宅軟禁状態にしている。しかし、彼らが現在どこで拘束されているのか、家族にはまだ知らされていないという。また、両牧師の妻2人と教会の女性スタッフ1人は釈放されたが、女性伝道師1人については現在も所在が不明だ。
ビター・ウィンターによると、昨年12月の全国宗教工作会議以来、中国当局は北京のほか、陝西、山西、吉林、四川の各省で、三自愛国教会への参加を拒否する教会に対する取り締まりを強化している。