米アップル社はこのほど、中国のアップストアから聖書とコーランのアプリを削除した。アップストアは、スマホ用アプリなどを提供する同社のサービス。削除は中国本土に限定したもので、香港やマカオでは現在も利用できる。
アップストアの検閲状況監視サイト「アップルセンサーシップ(アップル検閲)」によると、これまで中国本土のアップストアでも利用可能だった聖書アプリ「オリーブ・ツリー・バイブル」(Olive Tree Bible)と、コーランアプリ「コーラン・マジード」(Quran Majeed)が現在、利用できなくなっている。アップルセンサーシップがツイッター(英語)でこのことを明らかにしたのは12日で、24日現在も両アプリは利用できないままだ。
複数のメディアによると、両アプリの削除は中国当局の要請に従ったことによる。中国当局は両アプリが宗教的な文章や素材の使用を禁止する法律に違反していると主張しているという。
オリーブ・ツリー・バイブルや電子聖書の出版などを行う米オリーブ・ツリー・バイブル・ソフトフェア社の広報担当者は英BBC(英語)に対し、「中国本土で書籍や雑誌のコンテンツを含むアプリを配信するには、そうする権限があることを証明する許可証を提出する必要があるとアップストアの審査過程で知らされた」とコメント。「当社は現在、中国のアップストアに聖書アプリを復帰させ、世界中に聖書を配信し続けることができるという希望を持って、必要な許可証を取得するための要件を検討中」だと語った。
コーラン・マジードの開発元であるパキスタン・データ・マネジメント・サービス社(PDMS)は、「アップル社によると、当社のアプリは中国当局からの追加書類が必要なコンテンツを含んでいるため、中国のアップストアから削除された」と説明。「この問題を解決するため、中国のサイバースペース管理局および関連当局と連絡を取ろうとしています」と述べている。
中国は今年に入って宗教関係者に対する厳しい行政措置が新たに施行されたことに伴い、聖書アプリやキリスト教系のウィーチャット(中国のメッセンジャーアプリ)の公開アカウントを削除するなど、インターネットの取り締まりを強化している。
キリスト教迫害監視団体「オープンドアーズ」がまとめた「ワールド・ウォッチ・リスト2021」では、中国は世界で17番目にキリスト教に対する迫害が厳しい国としてランクされている。18年は43位だったが、19年は27位、20年は23位、そして21年は17位と、この3年で状況は急激に悪化している。オープンドアーズは報告書で、中国について「インターネットやSNS、非政府組織、および宗教的規制に対する新たな規制が厳しく実施されており、自由に対する深刻な制限となっている」としている。