中国の共産党当局がこのほど、約1年半前にマレーシアで開催されたキリスト教のカンファレンスに参加したことを理由に、山西省の「家の教会」の信徒5人を逮捕した。
米国に拠点を置く迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC、英語)によると、5人は同省太原の「郇城(シュンチェン)改革教会」の信徒。昨年1月、中国系インドネシア人のスティーブン・トング牧師が主催したカンファレンス「KL2020ゴスペル・アンド・カルチャー」に参加したことを理由に、7月26日に逮捕された。
同教会の説教者である安彦魁(アン・ヤンクイ)氏によると、キリスト教信仰を理由に15日間の行政拘禁を受けていた信徒の趙維凱(チャオ・リゴン)氏が釈放されるのを迎えに行った際、2人が逮捕され、他の3人は自宅で逮捕された。5人は有効なパスポートを所持して合法的にマレーシアに渡航し、昨年1月28日から31日にかけて開催されたカンファレンスに参加していた。
カンファレンスには、米ニューヨークのリディーマー長老教会の創設者として知られる神学者でベストセラー作家のティム・ケラー氏や、トリニティー神学校の新約学名誉教授で福音派ネットワーク「ゴスペルコアリション」の共同創設者であるD・A・カーソン氏らが登壇した。
安氏は世界中のキリスト教徒に、逮捕された5人のための祈りを呼び掛けている。自身のフェイスブックには「神がご自身の子らを決して見捨てず、十字架を背負う道を歩む教会に憐(あわ)れみを与え続けてくださいますように」と書き込んだ。10日時点で、5人が現在も拘留されているかどうかは不明。
郇城改革教会はこの数カ月間、当局から標的とされ、絶え間ない嫌がらせを受けている。昨年11月には、説教者と信徒数人が拘禁された。
60カ国以上でキリスト教徒に対する迫害状況を監視している「オープンドアーズ」は、中国には約9700万人のキリスト教徒がいると推定しているが、その大部分は中国当局が「違法」と見なす未登録の「家の教会」で礼拝しているという。
また、今年に入って宗教関係者に対する厳しい行政措置が新たに施行されたことに伴い、中国当局は聖書アプリやキリスト教系のウィーチャット(中国発のメッセンジャーアプリ)の公開アカウントを削除するなど、キリスト教に対する取り締まりを続けている。
ICCの東南アジア地域マネージャーを務めるジーナ・ゴー氏は、「2018年2月に宗教に関する改正規則が施行されて以来、中国政府は、国が認可していない宗教活動を抑制しようとする法律をさらに追加しています」と話す。
「中国政府は、中国のキリスト教徒が海外のキリスト教徒と交流することに疑心を抱いています。その結果、『外国からの影響を受ける』ことを抑止するために、キリスト教徒に罰則を与えているのです。中国政府が常に法律を操作して国民の信教の自由を侵害しているのは残念なことです」
迫害がひどい上位50カ国をまとめたオープンドアーズの「ワールド・ウォッチ・リスト」(英語)によると、中国は世界で17番目に迫害がひどい国としてランク付けされている。また米国務省は、「信教の自由に対する特に深刻な侵害を継続している」として、中国を信教の自由において「特に懸念のある国」に指定している。