米プロテスタント最大の教団である南部バプテスト連盟(SBC)が、ウイグル人に対する中国政府の「ジェノサイド」(大量虐殺)を非難する決議案を採択した。米国に拠点を置く主要な教団で、この問題に非難の声を上げたのはSBCが初めて。
採択された第8号決議案「ウイグル人虐殺に関して」(英語)は、中国共産党に対し、中国西部の新疆ウイグル自治区を中心に居住するイスラム教徒主体の少数民族であるウイグル人の虐殺を停止し、「神から与えられた彼らの諸権利を最大限回復する」ことを求めている。また米政府に対しては、「ウイグル人を難民として優先的に受け入れ、援助物資や再定住に必要なリソースを提供する」よう求めている。その上で、迫害下にあるウイグル人のために、物質的支援とキリストの福音の双方を提供できるキリスト教徒のワーカーが起こされるよう祈り求めている。
同議案は、先月中旬にテネシー州ナッシュビルで開催された年次総会で1万5千余りの代議員に提示され、「信頼できる報告」を引用した上で、中国共産党によるウイグル人の迫害を明らかにしている。迫害の内容は、強制中絶、レイプ、性的虐待、不妊手術、臓器狩り、人身売買、科学実験など多岐にわたる。
ロイター通信(英語)によると、中国西部の強制収容所には、推定で100万~300万人のウイグル人が収容されているとみられている。また、こうした収容所では、イデオロギー的な洗脳を受け、中国共産党に決して逆らわない一般市民になるよう教育されるという。
この議案を提出したマディソン・バプテスト教会(ジョージア州マディソン)のグリフィン・ガレッジ牧師は、中国共産党によるウイグル人の迫害は「世界で起きている最悪の事態の一つ」にすぎないと話す。
「これは民族浄化であり、大量虐殺であり、ホロコーストです。ウイグル人は、今の時代ではほとんど見られなくなったおぞましい扱い方をされています」とガレッジ牧師はクリスチャンポストに語った。「こうしたことのすべてが中国政府の権威の下で起きているのに、誰も何も言いません。しかし、私たちには声を上げる義務があります」
ウイグル人の多くは遠隔地で暮らしているが、中国政府は高性能カメラや顔認識技術、DNAサンプルの収集など、最先端技術を駆使して弾圧を行っている。
米政府系の自由アジア放送(RFA)の昨年の報道(英語)によると、新疆ウイグル自治区の病院では、中国政府が義務付けている家族計画の上限を超えている場合、中絶を強制したり、生まれてきた新生児(満期出産で生まれた新生児も含む)を殺害したりするよう命じられていたという。同自治区内の複数の病院に15年勤務した看護師がRFAに話したところによると、ウイグル人やその他の少数民族に対しては、1家庭当たりの子どもの数が農村部で3人、都市部で2人という家族計画政策が取られており、それぞれの子どもの出産も3年以上開ける必要があるという。
ガレッジ牧師は、ウイグル人への迫害を非難することはSBCの神学的使命に合致しており、聖書の中で全世界に福音を伝えるよう呼び掛けているイエスの命令に従うことになると強調し、次のように語った。
「神学に対するバプテストの最大の貢献は信教の自由です。これは『どんなことがあっても、私たちは信教の自由を守ります』と一貫して主張すべき分野です。信教の自由は世界宣教の扉を開きます。バプテストである私たちの2大優先事項は信教の自由と世界宣教です」