英国国教会の前カンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズや、アジア司教協議会連盟会長のヤンゴン大司教チャールズ・マウン・ボ枢機卿ら宗教者70人以上が10日、中国政府によるウイグル人弾圧を非難する共同声明(英語)を発表した。声明に署名した宗教者は米英を中心としたキリスト教、ユダヤ教、仏教、イスラム教の指導者らで、イスラム教徒が主体のウイグル人に対する弾圧は「潜在的な大量虐殺」の域に達しており、「ホロコースト以来、最も深刻な人類の惨事」だと憂えた。
宗教者らは声明で、中国では少なくとも100万人のウイグル人や他のイスラム教徒が、強制収容所に収監され、飢餓や拷問、殺人、性暴力、強制労働、臓器摘出の強要に直面していると指摘。収容所外でも信教の自由は否定され、女性に対しては大々的な強制不妊や産児制限が行われており、中国政府がウイグル人の民族的な根絶を目指していることは明らかだと非難した。
その上で、信仰者は「同じ人間を顧みる責任があり、ウイグル人が危険にさらされている場合は行動を取る義務がある」と訴え、ナチスに抵抗したドイツ人牧師ディートリッヒ・ボンヘッファーの言葉「悪に直面して黙ること自体が悪である」を引用。「このような大虐殺に終止符を打つため、私たちは信仰と良心を持つ人々に祈りと連帯と行動による賛同を求めます」と述べ、ウイグル人に対する正義の実現を呼び掛けた。
声明の全文(本紙日本語訳)は以下の通り。
宗教および宗教を土台とした共同体の指導者として、私たちはすべての人の尊厳を守るべく結集して、声を上げます。中国で行われているウイグル人や他のイスラム教徒に対する潜在的な大量虐殺は、ホロコースト以来、最も深刻な人類の惨事です。
私たちは数多くの迫害や虐殺を目にしてきました。こうした行為に、私たちは注意を払わなければなりません。しかし、このまま見過ごされた場合、万人の普遍的人権を擁護すべき国際社会の意欲が深刻に疑われる事案が一件あります。すなわち、ウイグル人の窮状です。
中国では少なくとも100万人のウイグル人と他のイスラム教徒が強制収容所に収監されており、飢餓や拷問、殺人、性暴力、強制労働、臓器摘出の強要に直面しています。
強制収容所の外では基本的な信教の自由が否定され、モスクが破壊され、子どもたちが家族から引き離され、コーランの所有、祈りや断食といった何気ない行為が逮捕につながる場合があります。
世界で最も強引な監視国家(中国)が、新疆(しんせん)では生活のあらゆる面に介入しています。
ウイグル人が在住する4つの県では、出産年齢にあるウイグル人女性の少なくとも8割を対象に強制不妊と産児制限を行うキャンペーンが行われていることが最近の調査で明らかになっています。1948年のジェノサイド条約によると、この行為は大量虐殺に該当するレベルだといいます。
中国当局が、ウイグル人の民族性の根絶を目的としていることは明らかです。中国国営メディアは、「彼ら(ウイグル人)の血筋と民族的ルーツを根絶し、ウイグル人の縁故と起源を破壊すること」が目標だと述べています。ワシントン・ポスト紙が報道したとおり、「虐殺の意図を宣言すること以外の何かだと理解するのは困難」です。中国政府の内部文書には、「絶対に容赦してはいけない」と書かれています。
国会議員や政府、法律専門家には調査する責任があります。
信仰の指導者である私たちは、活動家でも政策立案者でもありません。しかし私たちは、信仰の共同体に対し、同じ人間を顧みる責任があり、ウイグル人が危険にさらされている場合は行動を取る義務があると呼び掛けます。
ホロコーストでは、複数のキリスト者がユダヤ人を救いました。一部は声を上げました。ディートリッヒ・ボンヘッファーの言葉を引用します。「悪に直面して黙ること自体が悪である。(中略)語らないことは語ることであり、行動しないことは行動である」。世界はホロコーストの後に言いました。「ネバー・アゲン」(二度と繰り返してはいけない)と。
今日、私たちは、この「ネバー・アゲン」という言葉を何度も繰り返します。私たちはウイグル人を支持します。中国全土のチベット人仏教徒、法輪功学習者、キリスト教徒たちを支持します。信教の自由において、彼らは文化大革命以来の最悪の取り締まりに直面しているのです。
このような大虐殺に終止符を打つため、私たちは信仰と良心を持つ人々に祈りと連帯と行動による賛同を求めます。こうした犯罪を調査し、責任を取らせ、人としての尊厳の回復に向けた筋道を確立するため、私たちはただ正義を呼び掛けます。