中国各地でここ最近、社会保障の受給者が、自身の宗教を放棄しなければ給付を取り消すと強要されるケースが相次いで報告されている。障がい者が信仰を理由に障がい者手当を受けられなくなった例もあり、受給後に「神に感謝します」と口にしたことで、給付対象から外された例もある。
中国の信教の自由に関するニュースを配信している「ビタ-・ウィンター」(英語)によると、山西省臨汾(りんふん)市内のある町では4月、管轄下のすべての村の役人たちを召集する会議が開催された。会議に参加した役人たちは、何らかの社会保障手当を受給し、かつ宗教を信仰している家庭があれば、十字架の他、宗教的なシンボルや絵画などを取り除き、代わりに毛沢東や習近平国家主席の肖像画に差し替えるよう命じられたという。さらに、この措置に抗議する者には、給付を取り消すようにも指示されたという。
実際に同市内のある村では、政府公認教会に通う信徒の自宅に数人の役人が訪れ、キリストが描かれたカレンダーなどを取り除き、毛沢東の肖像画に差し替えてしまった。役人たちは「宗教を信じる貧しい家はただでお金をもらうことはできない。お金をもらうなら、共産党に従う必要がある」と吐き捨てて行ったという。
ビタ-・ウィンターによると、こうした措置は中国各地で確認されている。江西省新余市では4月、障がいのある男性クリスチャンが、最低生活保障手当と毎月100元(約1500円)の障がい者手当を取り消された。男性の妻は「役人は、もし私と夫が礼拝に参加し続けるなら、私たちを反共産党分子として扱うことになると言いました」と語った。
江西省ハ陽県の政府公認教会に通う80代の信徒は1月中旬、毎月200元(約3千円)の社会保障手当を受け取った後、「神に感謝します」と口にしたことで、給付対象から除外されてしまった。
10年以上前に夫を亡くし、2人の息子を女手一つで育ててきた河南省衛輝市の女性クリスチャンは、4年前から最低生活保障手当を受給していた。しかし4月初旬、村の役人は女性に、信仰を放棄する声明書に署名し、自宅にあるキリスト教のシンボルをすべて破壊するよう命じた。女性は拒否したため、給付が取り消されてしまったという。
この他、河南省商丘市の70代の女性は4月、自宅のドアに十字架の絵画を掛けていたのを役人が見つけ、それを理由に最低生活保障手当の給付を取り消されてしまった。女性は糖尿病を患っており、定期的なインスリン注射が必要で、手当の打ち切りは生死に関わると訴えている。