米国務省は10日、最新となる「信仰の自由に関する国際報告書」(2019年版、英語)を発表した。この日、記者会見を開いたマイク・ポンペオ国務長官らは、スーダンやアラブ首長国連邦(UAE)、ウズベキスタンでは、信教の自由の進展が見られたとしたが、中国やナイジェリアなどでは宗教者に対する迫害が継続していると指摘。イランや中米のニカラグアでも信教の自由が侵害されていると語った。
ポンペオ氏は記者会見で、2019年は信教の自由の目覚ましい進展が見られた年であったと述べる一方、「信仰の人々が迫害され、礼拝する権利を否定されている世界の一部の地域においては、非常に深い闇が覆っている」と語った。
中国については、新疆(しんきょう)ウイグル自治区におけるイスラム教徒の少数民族ウイグル族に対する取り扱いや、チベット仏教やキリスト教の信者らに対する弾圧を挙げ、「政府が支援するすべての宗教に対する圧力が継続して増加した」と批判。「中国共産党は今、宗教団体に党指導部への忠誠を命じ、宗教上の教義や実践に共産主義の考えを吹き入れている」と語った。
ナイジェリアについては、「ボコ・ハラム」や「イスラム国西アフリカ州」(ISWAP)などの過激派組織による襲撃が継続していると、報告書は指摘している。また、イスラム教徒主体の遊牧民フラニ族とキリスト教徒主体の農耕民の間における衝突が相次いでいるとし、キリスト教信仰を理由にフラニ族が農耕民を襲撃しているとするキリスト教団体による指摘があることも報告されている。
米国務省は昨年12月、最も信教の自由の侵害がひどい「特に懸念のある国」(CPC)として、ミャンマー、中国、エリトリア、イラン、北朝鮮、パキスタン、サウジアラビア、タジキスタン、トルクメニスタンの9カ国を指定しているが、今回はCPCの更新などは発表されなかった。米国際宗教自由委員会(USCIRF)は今年4月、これら9カ国に加え、インド、ナイジェリア、ロシア、シリア、ベトナムの5カ国を新たにCPCに指定するよう勧告する報告書を発表しており、米国務省による今回の報告書を歓迎しつつも、時期にかなったCPCの指定を要望。特にインドについては2019年に組織的かつ継続的な信教の自由の侵害が見られたとして、CPCへの指定を強く求めた(関連記事:米国際宗教自由委員会、「特に懸念のある国」にインドを新たに指定勧告)。
米国務省による「信仰の自由に関する国際報告書」は、1998年に米連邦議会で可決された「国際信教の自由法」に基づくもので、各国の米国大使館が毎年、政府職員や宗教団体、NGO、大学、報道機関などから情報を収集し、管轄地の報告書を取りまとめている。