中国福建省厦門(アモイ)市で3日、政府非公認の「家の教会」が警察による暴力的な取り締まりを受け、日曜礼拝をしていた信徒数人が負傷するなどした。取り締まりの様子を捉えた動画には、警官ら数十人が押し寄せ、信徒たちを力尽くで押さえ込む姿が映っており、女性や子どもたちが泣き叫ぶ声も聞こえる。
迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC、英語)によると、同市集美(しゅうび)区の民族宗教局員や警官ら数十人が同日午前9時、同区の「杏光(シングォン)教会」に押し入り、信徒たちが賛美を歌っている中、「(集会は)違法」だと声を上げるなどして礼拝を妨害した。複数の男性信徒が部屋のドアを塞いで侵入を止めようとしたが、警官らは室内になだれ込み、携帯電話による撮影をやめるよう叫ぶなどした。信徒たちが拒否すると、警官らは信徒数人を部屋の外に引きずり出し、携帯電話を強奪。動画では、警官らが「撮影をやめろ」と叫びながら、信徒たちを床に押さえ付ける様子が確認できる。
在米中国人団体「華人基督徒公義団契」(Chinese Christian Fellowship of Righteousness=CCFR)が公開した動画でも、激しい取り締まりの様子が確認でき、女性の叫び声や子どもたちの泣き声が聞こえる。CCFRによると、この動画は女性信徒が撮影したもので、携帯電話が没収される前に送られてきたものだという。動画では、信徒の一人が「あなたがたは私の家に押し入り、私たちの携帯電話を奪い取り、人々を殴り、力づくで妨害しました。これは許されることではない」と叫ぶなどしている。CCFRによると、教会学校の「麦子(マイツー)学堂」も取り締まりを受けた。
米キリスト教人権団体「対華援助協会(チャイナエイド)」の傅希秋(ボブ・フー)会長もツイッターに、取り締まりの様子を捉えた複数の動画(中国語)を投稿した。フー氏によると、警官らともみ合いになったことで、男性信徒の1人は胸部挫傷と肋骨(ろっこつ)骨折、および腕の打撲を負った。ICCによると、他に男女2人も警官との衝突で負傷したという。
警察は取り締まりの様子を撮影していた近隣の民家にも押し入り、撮影を理由に3人を連行。さらに許可なく他の複数の民家にも押し入り、住宅内の書籍類を調べるなどしたという。
ICCによると、この取り締まりでは男性信徒6人が拘束されたが、12時間後には釈放された。釈放された男性信徒たちは、拍手と抱擁で他の信徒たちに迎えられたという。
杏光教会が標的にされたのはこれが初めてではない。4月19日にも取り締まりを受けており、同教会の男性説教者は、宗教規定の複数の条項に違反したとして行政処分の事前通知を受けるなどしていた。
ICC東南アジア地域担当マネージャーのジーナ・ゴー氏は、中国で新型コロナウイルスが収束に向かっているのに伴い、政府が国内のキリスト教に対する弾圧を再開したと見ている。
「ここ数週間、公認教会においても教会堂の取り壊しや十字架の撤去が中国全土で増加しています。一方、家の教会は、集会への立ち入りや嫌がらせを受け続けています。地方当局が適切な手順なしにこのような取り締まりを行ったことに加え、信徒や居合わせた人たちに対して過度の実力行使を行ったことは遺憾です。ICCは国際社会と米国政府に対し、中国の絶え間ない人権侵害を非難するよう求めます」
中国ではこの他4月2日には、湖南省の家の教会「特利(ベテル)教会」創設者の趙淮国(ザオ・ファイゴ)牧師が、政府公認の三自愛国教会への加盟を拒否したことで、国家政権転覆扇動罪により逮捕された。さらに逮捕翌日には、警官6人が特利教会を訪れ、聖書を含む書籍480冊を違法な書籍だとして没収した。
米国務省は1999年以来、中国を人権上、「特に懸念のある国」と見なしている。米国内外の信教の自由に関する状況を検証している政府機関「米国際宗教自由委員会」(USCIRF)は今年、信教の自由の観点から中国を世界最悪の国家に含めることを米政府に勧告する報告書を発表した。
同委は、キリスト教徒への迫害に加え、推定90万~180万人のウイグル人、カザフスタン人、キルギスタン人、およびイスラム教徒が現在、新疆(しんきょう)ウイグル自治区にある1300余りの強制収容所に収容されているとし、中国における信教の自由は「悪化し続けている」と指摘している。