米国際宗教自由委員会(USCIRF)は4月28日、2020年の年次報告書(英語)を発表した。報告書は、昨年の米国内外における信教の自由の状況に関するもので、スーダンやウズベキスタンなどで大きな改善があったと報告。一方、インドなど幾つかの国では深刻な悪化が見られたとし、「特に懸念のある国」(CPC)として、米国務省が昨年12月に指定した9カ国に加え、インドを含む5カ国を指定するよう勧告した。
USCIRFがCPC指定を勧告しているのは、昨年12月に指定されたミャンマー、中国、エリトリア、イラン、北朝鮮、パキスタン、サウジアラビア、タジキスタン、トルクメニスタンの9カ国と、インド、ナイジェリア、ロシア、シリア、ベトナムの5カ国。インド以外は昨年の年次報告書(英語)でもCPC指定が勧告されており、ナイジェリアとロシアは昨年12月、一段階低い「特別監視リスト」(SWL)に指定されている。シリア、ベトナムはCPC指定が勧告されていたが、CPC、SWLのいずれにも指定されなかった。インドは、昨年はSWL指定への勧告(昨年までは「第2層」と区分)で、実際にはCPC、SWLのいずれにも指定されなかったが、今年はUSCIRFの報告の段階で、SWL指定勧告からCPC指定勧告へ引き上げられた。
SWLには今年、15カ国を指定するよう勧告。内訳は、すでにSWLに指定されているキューバ、ニカラグア、スーダン、ウズベキスタンの4カ国と、アフガニスタン、アルジェリア、アゼルバイジャン、バーレーン、中央アフリカ、エジプト、インドネシア、イラク、カザフスタン、マレーシア、トルコの11カ国。スーダン、ウズベキスタン、中央アフリカの3カ国は昨年、CPC指定勧告だったが、今年はSWL指定勧告に変更された。
USCIRFはこの他、信教の自由を深刻に侵害している「特に懸念のある団体」(EPC)に、次の6つの組織を指定するよう勧告している。
ソマリアのイスラム過激派組織「アルシャバブ」、ナイジェリアのイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」、イエメンのイスラム教シーア派武装組織「フーシ」、アフガニスタンの「イスラム国」(IS)分派組織「イスラム国ホラサン州」(ISKP)、アフガニスタンのイスラム教スンニ派過激組織「タリバン」、シリアのサラフィー・ジハード主義の反政府武装組織「タハリール・アルシャーム機構」(HTS)。この内、HTS以外の5つの組織は、昨年12月にすでにEPCに指定されており、指定の継続を求めた形。
米国の現政権については昨年、国際的な信教の自由に関する政策の優先順位を引き上げたことを評価。昨年の年次報告書で主要な勧告事項としていた礼拝所と宗教施設の世界的な保護のために、現政権が多大な資金を投じたことや、今年初め、国際的な信教の自由に焦点を当てた上級職務を史上初めてホワイトハウスに設置したことなどを評価の理由として挙げた。USCIRFのゲイル・マンチン副委員長は、「この職務の設置は、USCIRFが長年にわたり勧告してきたことでした」と述べた。
一方、USCIRFは現政権のこうした努力を歓迎する一方、CPC指定国に対しては、既存の制裁や権利放棄を繰り返し強要することを中止し、各国が信教の自由の侵害に対する説明責任を果たすよう独自の行動を取ることを要請した。
USCIRFは今年の年次報告書には、CPC、SWL指定を勧告している29カ国の調査結果に加え、信教の自由に関する世界的な傾向を取り上げた新セクションも設置した。そこでは、中国政府による人権擁護活動家に対する国際的な嫌がらせや、ブルネイとシンガポールで新たに採択された冒とく法、欧州における反ユダヤ主義の増加、礼拝所や聖地に対する襲撃の急増などを報告している。