同性愛に関する見解の表明をめぐって、フィンランドの国会議員とルーテル教会の監督が起訴された訴訟で、ヘルシンキ地裁は3月30日、検察側の訴えを退ける判決を下した。
フィンランド元内相のパイビ・ラサネン議員と、フィンランド福音ルーテル宣教教区(ELMDF)のユハナ・ボージョラ監督は昨年、過去に同性愛に関する自身の見解をSNSやラジオ、教会向けの冊子で表明したり、該当の冊子を出版したりしたことが、民族的扇動罪に当たるとして起訴された。
このうち問題とされたSNSの投稿は19年のもので、ラサネン氏が所属するフィンランド福音ルーテル教会(ELCF)が、この年に開催されたプライドパレードの公式パートナーとなったことに対し、「教会の教義的基盤である聖書が、恥や罪深いと定めることと、それを誇りの対象として持ち上げることと、どうして両立し得るのでしょうか」と疑問を投げ掛けるものだった。
2月に行われた最終陳述で検察側は、「罪」という言葉の使用は「軽蔑的」で「有害」である可能性があると主張。「聖書や同性愛に対する宗教的見解ではなく、それらの表現が争点なのです」「争点はラサネン氏の言葉であって、聖書の言葉ではありません。対象はラサネン氏であって、使徒パウロではありません」などとしていた。
しかし、ヘルシンキ地裁は判決で「聖書の概念を解釈するのは地方裁判所ではない」などとし、検察側の訴えを棄却。検察側は6万ユーロ(約810万円)を超える訴訟費用の支払いを命じられた。検察は7日以内に判決を不服として控訴するかを判断する。
ラサネン氏は判決後、「裁判所が言論の自由への脅威を認め、私たちに有利な判決を下してくれたことにとても感謝しています」とコメント。「無罪が確定し、肩の荷が下りた気分です」とし、「言論の自由のために立ち上がる機会を得たことに感謝していますが、この判決が他の人々が同じ試練を受けることを防ぐ一助になればと願っています」と述べた。
ラサネン氏らの代理人を務めたキリスト教法律団体「ADFインターナショナル」のポール・コールマン事務局長は、判決を歓迎し、次のように述べた。
「これはフィンランドにおける言論の自由という基本的な権利を支持する重要な判決です。自由な社会では、誰もが検閲を恐れることなく、自身の信念を伝えることが許されるはずです。これはすべての自由で民主的な社会の基盤です。いわゆる『ヘイトスピーチ』法によって言論を犯罪化することは、重要な公開討論を封じ、民主主義に対する重大な脅威となります」