同性愛に関する自身の見解などを表明したことで、フィンランド元内相のパイビ・ラサネン議員と、フィンランド福音ルーテル宣教教区(ELMDF)のユハナ・ポージョラ監督が起訴された訴訟が14日、結審した。判決は3月に言い渡される予定。
フィンランドの国教であるフィンランド福音ルーテル教会(ELCF)の信徒で、牧師の妻、5児の母であり、医師の経歴も持つラサネン氏は、保守的な考え方を持つクリスチャン議員として知られている。しかし、2004年と19年に同性愛に絡む結婚や性に関する自身の見解をSNSやラジオ、パンフレットなどで公にしたことが「民族的扇動」に当たるとして昨年、計3件の表現行為で起訴された。
ポージョラ氏は、04年にラサネン氏のパンフレットを出版し、その内容を教会のウェブサイトから削除することを拒んだとして、同様に「民族的扇動」の罪で起訴された。2人は共に無罪を主張している。
14日に行われた最終陳述で検察側は、公の場における宗教的信念の表現には制限があると主張。思想・良心の自由は無制限であるとする一方、「本法廷では、聖書や同性愛に対する宗教的見解ではなく、それらの表現が争点なのです」と強調した。
また「罪」という言葉の使用は「軽蔑的」で「有害」である可能性があると主張。「争点はラサネン氏の言葉であって、聖書の言葉ではありません。対象はラサネン氏であって、使徒パウロではありません」などと述べた。
審議が行われたヘルシンキ地裁の外には、ラサネン、ポージョラの両氏を支援するために約3千人が集まった。
両氏の代理人を務めるキリスト教法律団体「ADFインターナショナル」のポール・コールマン事務局長は、この訴訟は「現代の新しい性観念的正統派による異端審問か異端裁判だ」と批判。同団体の法律顧問であるローカン・プライス氏は、次のように述べた。
「ヘイトスピーチをめぐる訴訟が、フィンランドで許されているキリスト教信仰の表現の範囲をめぐる神学的裁判に変わってしまいました。このような裁判が、宗教的な神政国家ではなく、現代欧州の国家で起こっているとは信じがたいことです」